材料の開発には、試作や測定を繰り返す手間と時間が欠かせません。特に半導体向けの感光性樹脂や高機能ポリマーでは、最適な組成を見極めるまでに膨大な実験が必要でした。こうしたプロセスを効率化する手段として注目されるのがマテリアルズインフォマティクス(MI)です。
近年、ディープラーニング技術と過去の実験データを活用するケモインフォマティクスアプリを開発した株式会社レゾナックは、初心者にも扱いやすいインターフェースを備え、材料探索のスピードアップを実現しました。本記事では、このレゾナックにおけるマテリアルズインフォマティクス(MI)の導入とその成果について解説します。
従来、新規化合物の探索では文献や経験に基づく予測を立てた後、量子化学計算や実験を繰り返す手法が一般的でした。量子化学計算は高精度ですが一つの予測に長時間を要し、専門知識が不可欠です。
また、ケモインフォマティクスを用いる場合でも、分子記述子の設計やデータ前処理には深い技術的蓄積が求められ、実験者が日常的に活用するにはハードルが高い状態でした。その結果、材料開発の初期段階で検討できる組み合わせが限られ、開発サイクル全体の短縮が難しいという悩みを抱えていました。
レゾナックの計算情報科学研究センターが自社開発したMIアプリは、過去の計算結果や実験データをディープラーニングモデルに学習させることで、物性予測をこれまでの数千倍の速さで行います。ユーザーはWebブラウザ上で分子を直感的に描画し、ワンクリックで物性値を出力できるため、専門知識が浅い技術者でも扱うことが可能です。
実際に半導体パッケージ用レジストのポリマー探索では、従来の方法で数週間かかっていた組成検討が数十分で完了し、試作品の評価でも良好な特性が確認されました。
また、モノマー100種から最適な組み合わせを探索する際には、アニーリング技術を組み合わせることで従来約10万年相当の組み合わせ検証を約10秒に短縮。この成果により、配合から試作までの時間は熟練者による従来手法の約5分の1に圧縮されました。
参照元:MONOist公式HP https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2411/15/news081.html
レゾナックは今後もMI技術を深化させ、樹脂設計や複合材料など幅広い分野への適用を進めます。機械学習モデルの精度向上とともに、実験データのリアルタイム連携や自動最適化機能を強化し、材料設計のさらなる高速化を目指しています。
また、ユーザーコミュニティとの協業を通じて、多様な実利用ケースを取り込みモデルに反映させることで、初心者から専門家まで幅広い層の研究開発ニーズに応えるプラットフォームの構築を見据えています。これにより、半導体だけでなくエネルギー、医療、環境分野などにおいても、新素材開発の革新を後押しすることが期待されます。
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