新素材の探索や製造プロセスの高度化を目指す中で、住友電工は従来のオンプレミス環境だけでは対応しきれない課題に直面していました。材料の物性予測には膨大な計算資源が必要で、研究から製品化までの期間を短縮するためには、より柔軟かつ高速なコンピューティング基盤が求められていたのです。
こうした背景から同社が着目したのが、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)とそれを支えるクラウド型高性能計算(HPC)プラットフォームでした。このページでは、住友電工が抱えていた課題、MI導入によって得られた成果、そして今後の展望について分かりやすく解説いたします。
1分でわかる要約
住友電工は新素材探索で、物性予測に必要な計算量が大きく、オンプレミスだけでは同時並行のシミュレーションに限界があるという課題を抱えていました。1回の計算に数日〜1週間以上かかり、試せるパターン数が制約になるほか、研究所や大学との共同開発に必要なコード・データの安全な共有基盤も不足していました。
こうした状況を打破するため、同社はRescaleのクラウドHPCプラットフォームを採用しました。コンテナ環境でオープンソースや自社プログラムを動かせる点、ストレージ制限がない点、日本リージョンで利用できる点が選定理由です。導入後は、従来1週間かかっていたシミュレーションが約半日で完了し、計算時間を十分の一以下に短縮。新素材開発の期間も約10カ月から4~5カ月へ短縮され、総当たり計算による探索規模が数十倍に広がりました。
また、MPIを活用した大規模並列計算のPoCを迅速に進め、コンテナ環境への移行も完了したことで、共同開発を加速できる体制が整いました。研究の幅も広がり、GANやTransformerを用いたAIモデルの学習・評価も進めやすくなったとされています。今後は「地球」「ヒト」「暮らし」など新領域へ拡張し、テンプレート化したモデル共有や、クラウドとオンプレミスを組み合わせた運用も視野に、開発サイクルのさらなる短縮を目指します。
専門的な領域を持つMIベンダーを選ぶ重要性
MIの効果は、解析手法だけでなく「計算基盤の設計」「データの扱い方」「現場で回る運用」まで一体で整えられるかに左右されます。材料領域や用途に近いテーマでの支援実績があるベンダーほど、必要なデータ整備やモデル活用、計算環境の最適化まで含めて進めやすく、検証サイクルを回す上でも迷いが減ります。そのため、自社の研究テーマに近い専門領域で実績とデータ資産を持つMIベンダーを選ぶことが重要です。
このサイトでは、こうした専門領域に強みを持つMIベンダーを中立的な立場から整理し、特徴や支援内容を比較できるようにしています。次のセクションでは、候補を絞り込みたい方向けに「専門的な領域に強いMIベンダー3選」をご紹介します。
住友電工は自動車関連や情報通信機器、産業素材など多様な領域で世界トップシェアを誇る製品を手がけています。その一方で、新素材の開発においては「候補物質を人手で評価するには時間がかかりすぎる」「オンプレミス環境では同時並行で多数のシミュレーションを走らせられない」といった問題がありました。特に、電解液の粘度や高分子の密度といった物性を総当たり的に調べる際には、一つのシミュレーションに数日から1週間以上を要し、試行できるパターン数にも限界がありました。
加えて、多彩な研究所や大学との共同開発を円滑に進めるには、コードやデータを安全かつ効率的に共有できる仕組みが不可欠でした。しかし社内のサーバーでは、メモリ量やGPU性能の不足、ストレージ容量の制限から、こうしたニーズに応えられていませんでした。さらに、大規模なハードウェア調達には部門間の調整に長期間を要し、迅速な研究推進を阻む要因となっていました。
こうした状況を打破するために、住友電工はRescaleが提供するクラウドHPCプラットフォームを採用しました。理由は、オープンソースのシミュレーションソフトや自社開発のプログラムがコンテナ環境で動作し、ストレージ制限がなく、日本リージョンで利用可能といった点です。
導入後は、従来オンプレミスで1週間かかっていたシミュレーションが約半日で完了し、計算時間を十分の一以下に短縮。これにより、新素材開発に要する期間も従来の約10カ月から4~5カ月へと約半分に短縮されました。また、膨大な候補を一斉に計算する総当たりシミュレーションが可能になったことで、試験できるパターン数は従来の数十倍に拡大し、GAN(敵対的生成ネットワーク)やTransformerを用いた高度なAIモデルの学習・評価もスムーズに行えるようになり、研究の幅と深度が飛躍的に向上しました。
さらに、Rescaleの適切な導入支援とサポートにより、MPIを活用した大規模並列計算のPoC(概念実証)が迅速に達成され、コンテナ環境への自社プログラムの移行も問題なく完了。これを足掛かりに、研究所間や大学との共同開発を加速させる体制が整備されました。結果として、直近1年間で5件を超える特許出願に成功し、MI導入によるビジネス価値創出を明確に示しました。
参照元:Rescale Japan公式HP https://about.rescale.com/rs/285-WFD-495/images/Sumitomo_Electric_Case_Study_JP.pdf
住友電工は今後、従来の「自動車」「通信」「産業素材」といった領域に加え、「地球」「ヒト」「暮らし」といった新たなフィールドへ研究開発を広げる計画です。その実現には、さらなる計算基盤の強化とAIモデルの高度化が不可欠です。Rescale上でテンプレート化したAIモデルやプログラム共有の仕組みを活用し、研究者が自ら設定を調整しながら実験を繰り返せる環境を整備することで、開発サイクルをいっそう短縮できるでしょう。
また、エネルギー材料や環境対応型素材の研究では、リアルタイムな計算リソース配分が求められるケースが増えるため、Rescaleのスケーラブルなモデルが一層活躍すると期待されます。さらに、セキュリティ面では多要素認証やデバイス認証を引き続き活用しつつ、国内外のパートナーと安全に協働するためのガバナンス体制を強化。クラウドとオンプレミスを組み合わせたハイブリッド型アーキテクチャの導入検討も視野に入れ、耐障害性や運用効率の最適バランスを追求していきます。
これらの取り組みによって、住友電工は研究開発ビジョンである「新たな領域への挑戦」を実現し、グリーン素材や次世代デバイスの市場投入を加速。さらなるビジネス価値の創出と社会的課題の解決に貢献していくでしょう。
専門領域を持っているMIベンダーを厳選しました。
自社の研究対象に近しい領域を専門としているMIベンダーの方が、
コミュニケーションにズレがなく、知見や実績も豊富な可能性があります。

化学・素材分野で数多くの開発を成功に導いた実績があります。
日立グループ全体の強みを活かして材料開発を総合的に支援できることから、早期の市場参入を可能にします。

富士通では、創薬に特化したプラットフォームを用意。特許読解、法規制物質チェックにも一貫して対応可能。
特定の材料開発プロセスではなく、創薬研究プロセス全体のDXが叶う点も魅力です。

新しいエネルギー材料の特性を正確に予測する「Mat3ra」(旧Exabyte.io)プラットフォームを提供。
新しいバッテリー材料や軽量合金の開発をスピーディーに進められることが可能です。