マテリアルズインフォマティクス(MI)は、材料開発におけるAIやデータ解析の導入によって開発効率や精度を高める新しい手法です。 本ページでは、マテリアルズインフォマティクスの概要や導入の背景を解説したうえで、導入支援を行っているプラットフォーム開発企業を専門領域別にご紹介しています。 マテリアルズインフォマティクスベンダーの選定に悩んでいる方、社内の導入方針を検討している方に向けて、比較検討のヒントをお届けします。
マテリアルズインフォマティクス(Materials Informatics, MI)は、材料科学におけるデータ科学の応用であり、機械学習や人工知能(AI)を駆使して膨大なデータを解析し、材料の特性や挙動を予測する手法を指します。従来の試行錯誤に基づく実験では、新しい材料を開発するために多くの時間とコストがかかっていました。
しかしマテリアルズインフォマティクスでは、実験データと計算データを統合し、シミュレーションを活用することで開発プロセスを効率化し、短期間での材料設計を可能にします。これにより、開発スピードの向上とコスト削減が期待でき、さらに革新的な材料の発見も促進されます。データ駆動型のアプローチを導入することで、従来の開発における経験則や勘に頼る部分を大幅に削減し、より高精度な予測と最適化が実現し、競争力の向上が期待されます。
マテリアルズインフォマティクス(MI)の導入を検討する際、各ベンダーが特定の分野でどれほど豊富な高品質データを保有しているかを知ることは極めて重要です。豊かなデータがあるほど、探索可能な範囲が広がり、短時間で精度の高い材料組成や製法の提案が可能となります。そのため、ベンダーがどの分野に強みを持つかを理解し、自社の開発目標に合致する専門性やデータ資源を持つパートナーを選ぶことが重要です。
マテリアルズインフォマティクスのプラットフォーム開発企業は、多様な技術とデータ解析のアプローチを駆使して、材料開発を効率化するソリューションを提供しています。各企業は独自の強みを持ち、特定の産業分野に特化したサービスやデータ解析技術を用いて、企業の研究開発プロセスを支援しています。
専門領域を持っているMIベンダーを厳選しました。
自社の研究対象に近しい領域を専門としているMIベンダーの方が、
コミュニケーションにズレがなく、知見や実績も豊富な可能性があります。
化学・素材分野で数多くの開発を成功に導いた実績があります。
日立グループ全体の強みを活かして材料開発を総合的に支援できることから、早期の市場参入を可能にします。
富士通では、創薬に特化したプラットフォームを用意。特許読解、法規制物質チェックにも一貫して対応可能。
特定の材料開発プロセスではなく、創薬研究プロセス全体のDXが叶う点も魅力です。
新しいエネルギー材料の特性を正確に予測する「Mat3ra」(旧Exabyte.io)プラットフォームを提供。
新しいバッテリー材料や軽量合金の開発をスピーディーに進められることが可能です。
EAGLYSのマテリアルズインフォマティクス(MI)は、独自の秘密計算技術を核に、企業間で保有する機密データを“暗号化したまま”安全に共有・解析できるプラットフォームです。公開リスクを抑えつつ他社データと統合し、高度なAIモデルによる物性予測やシミュレーションが可能に。さらに、統計的に最適な実験条件を自動算出して試行錯誤を削減。既存AIモデルの迅速な暗号化対応やPoC支援にも対応し、短期間での導入・効果検証を実現します。
「ALCHEMISTA」と秘密計算技術を活用して、企業間でのデータ連携を通じて材料開発を効率化する試みが行われた事例です。 最初に行われたPoC(Proof of Concept:概念実証)では、暗号化されたデータを使用しても、生データとほぼ同じ精度の予測モデルの構築が確認されました。 データを暗号化したままでの最適化計算も成功し、システムが期待通りに機能することが証明されます。この結果により、社内でのMI導入に対する信頼と期待が高まりました。
Elixのマテリアルズインフォマティクス「Elix Discovery™」は、AI技術を駆使して化合物予測から設計、最適化までを一気通貫で支援する創薬プラットフォームです。化合物の活性や物性、ADMETプロファイルを自動モデル化するElix Predict、合成容易性も含めた新規化合物を生成するElix Create、少量データから効率的に学習を進め実験回数を削減するElix Assistを統合し、オンプレミス・クラウド双方での利用に対応。日本語・英語のサポートにより、安心して創薬プロセスを加速できます。
Elixのマテリアルズインフォマティクスに関する導入事例はありませんでした。
HPCシステムズのM-EVO®は、AIと進化計算を融合したクラウドベースのプラットフォームで、外部データベースに依存せず未知の分子構造を自動探索し、強度・耐熱性・導電性など複数の物性を同時に最適化します。加えて、Gaussian連携のAutoMOでは入力から計算結果管理、機械学習用データ整形までを一元サポートし、Reaction plus ProではNudged Elastic Band法による反応経路解析を自動化。これらを個別に活用することで、材料開発の各フェーズに応じた効率化を図ることが可能です。
HPCシステムズのマテリアルズインフォマティクスに関する導入事例はありませんでした。
MI-6のmiHub®は、AIとデータサイエンスを駆使して試行錯誤を最適化するSaaS型実験計画プラットフォームです。ノーコードで材料開発実験を設計できるだけでなく、ベイズ最適化による実験条件の自動推奨や物性予測モデルを通じて、試行回数と期間を大幅に短縮します。チーム全体で直感的にデータを管理し、プロジェクトの進捗や知見をリアルタイムに可視化・共有できるため、研究者間のコラボレーションを促進し、開発スピードと成果の質を同時に向上させます。加えて、Hands-on MIによる専門家支援や、MI Roboticsによる自動化実験機能を組み合わせることで、導入から運用、スケールアップまで一貫してサポートします。
大塚化学は、miHubを導入し、新規材料の開発プロセスを効率化。開発期間が半分に短縮されるなど、大きな成果を挙げました。従来の勘や経験に依存していた開発が、データに基づいたアプローチへと変わり、研究の精度が向上。迅速な製品開発が実現しています。
NTTデータ数理システムのマテリアルズインフォマティクスは、機械学習やベイズ最適化を駆使し、限られた実験データから未知の性能関数を探索し最適条件を自動提示します。GUIベースのAlkanoはプログラミング不要でベイズ最適化による実験計画を直感的に作成でき、材料探索の試行回数とコストを大幅に削減可能です。さらに、経験豊富なデータサイエンティストが伴走型で導入から運用まで支援し、社内のAIリテラシー向上と成果創出を同時に実現します。
村田製作所向けに、AIを活用した材料開発支援として、データが少なくても効率的に最適解を探せる「ベイズ最適化」を導入しました。従来の試行錯誤型開発の非効率を解消するため、NTTデータ数理システムと協力し、理論と実践ノウハウを習得。これにより少数の実験で材料探索と性能予測が可能となり、開発効率の向上と今後の技術革新の土台を築きました。
Preferred NetworksとENEOSの合張会社であるPFCCが提供するMatlantis™は、深層学習とAIを駆使して原子レベルでの材料シミュレーションを高速に実行するプラットフォームです。従来の量子化学計算と比べて数千倍のスピードで化学反応や物性評価を行い、研究開発の初期段階で有望な材料候補を瞬時に絞り込める点が最大の特徴です。ブラウザベースで特別なハードウェア不要、専門知識がなくても直感的に操作できるため、実験と計算の往復を最小化し、開発期間とコストを大幅に削減します。Matlantis™による高速予測は、新素材探索からエネルギー材料や機能性ポリマーなど幅広い領域での成果創出を強力にサポートします。
ENEOSは化学シミュレーションとAI/機械学習を組み合わせたバーチャル探索技術を活用し、触媒表面の反応エネルギーを解析。実験を行わずに2,000種類以上の合金候補を評価することで、研究開発のスピードと精度を大幅に向上させます。この手法により実験負担と環境負荷を削減し、将来的なエネルギー問題の解決にも寄与すると期待されています。
SCSKのCitrine Platformは、材料・化学分野に特化したAIプラットフォームで、スマートなデータ管理と高精度な性能予測によって製品開発を大幅に効率化します。プログラミング知識不要の直感的なUIと堅牢なセキュリティを備え、研究者は安心して実験データを一元管理。シーケンシャル・ラーニング技術により逐次的に最適候補を提案し、逆問題解析で目的性能を満たす材料組成を自動探索するため、従来の試行錯誤を大幅に削減します。さらに、AIモデルが継続的に学習・改善される仕組みを通じて精度を高め、持続可能な製品開発とコスト削減を両立。多くの企業がR&D戦略の中核として導入しています。
Morrow Batteries社は、コバルトフリーの正極材を使った電池の開発を行い、Citrine Platformを活用することで、実験回数を削減しながらも高品質で安全性の高い電池の開発に成功。時間やコストを抑えつつ、新材料の探索と製品化を効率的に進めることが可能となりました。
伊藤忠テクノソリューションズのマテリアルズインフォマティクスは、30年以上の材料解析シミュレーション技術とAIノウハウを融合したプラットフォームです。クラウド型サービス「Mat3ra」は、ブラウザ上で第一原理計算をGUI操作だけで実行でき、得られた分子構造データをAIが学習・解析して高精度な物性予測モデルを構築。REST-API連携による自動化も可能です。さらに、MI Success Labによる伴走型支援では、データ解析代行から技術トレーニングまでワンストップで提供し、材料探索の試行錯誤を削減、研究開発期間とコストの双方を大幅に圧縮します。
従来、熟練研究者の経験に頼っていた実験条件の決定を、MI技術で分析・モデル化し、全ての目標物性を満たす最適条件を導出。コストを20%削減し、さらに個別勉強会を通じて顧客社内でのMI技術の内製化を実現しました。
エンソートは化学とコンピュータ技術を融合し、クラウドベースの「Enthought Edge」で材料開発のデータ解析と機械学習を自動化するMI導入支援企業です。Enthought EdgeはJupyter Notebookなど既存ツールと連携し、大量実験データを高速処理して有望材料候補を予測、クラウドコスト監視機能や柔軟な計算リソース管理を備えてチーム横断のコラボレーションを促進します。さらに、「マテリアルズ・インフォマティクス推進プログラム」では、データ解析・シミュレーション技術の習得支援や企業ニーズに合わせたフレームワークカスタマイズを通じて、研究開発期間とコストの両面で効率化を実現します。
出光興産は、炭素利用触媒の開発で従来の試行錯誤による探索から、エンソートが提供するMI(マテリアルズインフォマティクス)アクセラレーションプログラムを導入しました。過去データや公開データベースを機械学習で解析することで、実験を効率化し、目標を予定よりも早く達成。研究者は6か月間のトレーニングでAIを用いたデータ解析技術を習得し、データ駆動型の意思決定を支えるツールを活用することで、今後数か月分の労力を大幅に削減できる見込みです。
コニカミノルタは、2016年からマテリアルズインフォマティクスを導入し、高分子複合材料やOLED材料の開発を加速しています。独自の数理モデルとAIによるデータ解析で、ポリプロピレン樹脂などの物性を高精度に予測し、実証実験での誤差を最小化。加えて、既存化合物を新用途に転用するマテリアルズリポジショニングにより、開発期間とコストを大幅に削減します。今後は化合物や材料ごとに最適化した予測モデルの拡充を進め、持続可能な製品開発と幅広い産業分野への応用を推進していきます。
コニカミノルタは、MIと遺伝的アルゴリズムを組み合わせ、樹脂の添加剤を効率的に探索する方法を開発。この手法により、従来の方法に比べて10~20倍の速度で新材料を発見できます。
少ないデータを基に、有機添加剤の特性をMIで予測し、遺伝的アルゴリズムで新しい化合物を生成。生成された化合物を評価し、そのデータを予測モデルに反映することで、短期間で効果的な添加剤を発見できるようになりました。
コベルコ科研は、マテリアルズ・リポジショニングを核に、材料ライフサイクル全体を最適化するマテリアルズインフォマティクスプラットフォームを提供しています。量子シミュレーションデータベースとコンビナトリアル合成を組み合わせて、ナノスケールの物性予測から高スループット合成までを自動化。AI解析で材料の劣化やリサイクル性を予測し、設計プロセスを効率化するとともに、CAEデータベースやサロゲーションモデル、xEV部品のMBDモデル構築支援など、多彩なサービスで新素材探索から製品化までのDXを実現します。
溶接材料の設計や開発プロセスの効率化と精度向上を目的とした取り組みです。MIにより、最適な溶接材料を選定し、開発の時間とコストを削減しました。
MIの適用により、材料の特性を予測するモデルが構築され、気孔欠陥率の低減や新材料の開発に成功しました。
島津製作所は、環境負荷低減と持続可能な社会の実現を目指し、AIとデジタル技術を融合した自律型実験システムを核にマテリアルズインフォマティクスを推進しています。独自開発の自律実験プラットフォームでは、CO₂固定化やスマートセルインダストリ技術と連携しながら、試料投入からデータ収集・解析、次実験条件の自動設定までを無人で実行。これにより、環境配慮型材料の探索を高速化すると同時に実験者の負担を大幅に軽減します。加えて、異なる計測機器が出力するデータを統一フォーマットへ標準化する取り組みにより、分光・熱分析・機械特性評価など多様なデータを一元管理し、解析精度と開発スピードを向上。量子FTIR技術による高感度赤外分光解析や、リチウムイオン電池材料の化学状態をラボ内で迅速評価するXspecia™(ポリクロWDX)などの先進ソリューションを組み合わせることで、材料開発の全フェーズを包括的にサポートします。
島津製作所のマテリアルズインフォマティクスに関する導入事例はありませんでした。
ダイキン工業のマテリアルズインフォマティクスは、機械学習とシミュレーションを融合したデータ駆動型研究開発プラットフォームで、電子実験ノートによる実験データのシームレスなデジタル化と統一管理を実現します。膨大な実験パラメータや解析結果を即時共有できる環境を整え、AIモデルで材料特性を高精度に予測しながら、試行錯誤のサイクルを高速化します。ParsleyLabではExcel形式のデータをそのまま活用した柔軟なデータベース構築やAPI連携で外部システムとシームレスに連動し、Pipeline Pilotはノンプログラミングで3,000以上のコンポーネントを組み合わせたデータ処理や機械学習モデル開発を容易にします。これにより、研究者は実験条件の最適化と迅速なフィードバックを得つつ、材料開発のコストと期間を大幅に削減できます。
ダイキン工業のマテリアルズインフォマティクスに関する導入事例はありませんでした。
ダッソー・システムズ・バイオビアのマテリアルズインフォマティクスは、BIOVIA Materials Studioで量子力学や分子動力学を駆使したナノ〜メソスケールの材料シミュレーションを実行し、直感的な可視化によって特性予測を迅速化します。BIOVIA Pipeline Pilotは3000以上のコンポーネントを組み合わせたノーコード環境で、シミュレーション結果の前処理や機械学習パイプラインを自動化。さらにBIOVIA Discovery Studioではタンパク質や低分子化合物のモデリングからドッキング解析までを一貫サポートし、医薬品開発や機能性材料設計にも対応します。これらを組み合わせることで、実験回数と開発期間を大幅に削減し、データ駆動型の研究開発を加速します。
レゾナックは電子実験ノート「BIOVIA Notebook」を活用して、マテリアルズインフォマティクスを推進しています。実験データが一元化され、データの検索や活用が容易になり、実験期間の短縮や「ダークデータ」の解消も進んでいます。
TDKの「Aim」は、インストール不要のWebブラウザベースAIデータ分析ソフトで、社内各部署に蓄積された実験・解析データを統一フォーマットで処理し、高速かつ高精度に分析できるプラットフォームです。2018年には従来手法では発見困難だった高特性磁石材料を短期間で特定し、2021年には5G/6G向け高周波材料2000種の損失予測モデルを構築。こうした成果により、開発サイクルの大幅短縮と予測精度の飛躍的向上を実現しています。今後はAimの機能拡張とAI技術の内製化を進め、電池や通信材料をはじめとする多分野のDX基盤として位置づけ、さらなる材料開発革新を目指します。
2018年、MIを活用して発見された新規磁石材料は、従来の技術者の経験や知識だけでは見つけにくい特性を持つもので、残留磁束密度(Br)や角型比(Hk/HcJ)といった特性が向上した磁石です。この技術により、可変磁束磁石として非常に重要な材料が開発されました。
MIの導入により、これまで見落とされていたパターンや材料特性を発見でき、従来技術では実現できなかった特性を持つ磁石が開発に成功した事例です。
トヨタ自動車はWAVEBASEを活用したマテリアルズインフォマティクスにより、赤外吸収分光やX線回折で得られる材料計測データをクラウド上で一元管理・解析しています。機械学習による次元削減やベイズ推定を駆使し、少量データから高精度な特性予測を実現。これによりシボ傷評価や磁石材料、ゴム・食品分野にも応用可能となり、実験回数の削減と開発スピードの大幅向上を支援します。
電動車のモーターに使用されるネオジム磁石は、ネオジムの使用量を減らすことが求められています。WAVEBASEを活用したX線回折データの主成分分析により、ネオジムの使用を抑えつつ磁石性能を維持することができました。
長瀬産業とIBMが共同開発したSaaS型MIプラットフォーム「TABRASA」は、長瀬産業の豊富な事業化ノウハウに基づくユーザーフレンドリーなUIと、IBMのクラウド/AI技術を融合。AIによる分子構造予測から物性値分析を行う「アナリティクス・アプローチ」と、特許や論文など非構造化データを自然言語処理で体系化する「コグニティブ・アプローチ」を相互補完的に実装しています。初期投資不要のクラウド提供により中小企業でも容易に導入でき、研究者の専門知識を問わず操作可能。これにより従来の試行錯誤型開発を数倍のスピードで効率化し、新素材探索から事業化までを一気通貫で支援します。
長瀬産業×IBMのマテリアルズインフォマティクスに関する導入事例はありませんでした。
日産アークは、マテリアルズインフォマティクス(MI)を活用して新材料の研究開発を効率化しています。電動化や軽量化技術のため、計算科学とデータ解析を駆使し、電池やパワーエレクトロニクス分野の課題解決に貢献しています。
日産アークのマテリアルズインフォマティクスに関する導入事例はありませんでした。
日立ハイテクのマテリアルズインフォマティクスは、グループ内の高度な分析装置と素材ドメイン知識を持つデータサイエンティストによるワンストップ支援体制を強みとしています。まず電子実験ノートで多様な計測データを統一フォーマットに収集・整形し、GUI/Python両対応のMIツールで研究者自身が学習モデル構築や最適化解析を実行できます。加えて、素材分野出身のデータサイエンティストが画像分析やテキストマイニングを代行することで、実験のブレークスルーをサポートします。AI探索エンジン「Chemicals Informatics®」は、約1億1800万件の既知化合物と約2040万件の新規化合物を対象に組み合わせ検索を高速に行い、有望材料候補を短時間で抽出します。これらのステップを通じて、データ不足の現場でも開発スピードと精度を大幅に向上させます。
巴川コーポレーションは製品開発のスピード遅延と人材育成の課題を抱えており、日立ハイテクのデータサイエンティストによる伴走支援とMIツールを導入しました。経験豊富なデータサイエンティストがアルゴリズム選択やデータ管理手法まで丁寧に指導した結果、通常2~3年かかる専門教育を数ヶ月で修了し、新人開発者がベテラン並みの考察力を獲得。
これにより、経験の浅い開発者でも効率的に材料開発を進められる体制が整い、社内のデータ駆動型開発の浸透を加速しています。
富士通のマテリアルズインフォマティクスは、データ駆動型アプローチにより、材料の特性や最適条件を高精度に予測し、新素材探索を飛躍的に効率化します。量子コンピュータの原理を応用した独自のデジタルアニーラとHPC環境を組み合わせることで、組み合わせ最適化問題を瞬時に解決し、リチウムイオン電池材料などの複雑な設計課題にも対応可能です。実験ノートをクラウドで一元管理できるSignals Notebookや、異分野データを活用したマテリアルキュレーション支援システムにより、データ不足の現場でも迅速にモデル構築が行えます。さらに、混合物設計ナビや研究開発支援ソリューションを通じて、プログラミング知識がなくてもAI活用を推進し、研究開発のDXを加速します。
耐熱性と加工性に優れたガラス材料を開発するため、シリカ、ホウ酸、ナトリウム酸化物、アルミナを用いてAIが最適な組成を予測。パイレックスガラスに近い組成を数分で見つけ出しました。
プロテリアルの「D2Materi™」は、AIとデータサイエンスを駆使したMIプラットフォームで、材料組成と性能の相関を高精度に予測し、仮想空間上での試作レス開発を実現します。具体的には、電線被覆材や金属材料設計の事例で実証された機械学習モデルにより、最適な組成候補を数値的に導出。さらに、文献・特許情報を自動抽出して必要な知見を即時取り込む機能を備え、これまでにないスピードで試験回数を削減し、開発サイクルを短縮します。Webベースのインターフェースですべてのプロセスを一元管理できるため、部署横断でのコラボレーションが容易になり、実機試作前の検証精度向上にも貢献します。
電線被覆材は、電線を外部環境から守るための重要な部分であり、高温や湿気、摩耗に耐える必要があります。従来の開発は試行錯誤の連続でしたが、D2Materi™を使用することで、過去のデータやAIによる解析を通じ、最適な素材の組み合わせを短期間で見つけ出すことが可能となりました。 従来1年かかっていた開発が、D2Materi™を活用することで約3か月に短縮。今後、この技術は他の素材開発にも応用される予定です。
三井情報は、長年培ってきたバイオインフォマティクスやケモインフォマティクスの技術を土台に、サイバーフィジカルシステムの視点を材料開発に応用することで、マテリアルズインフォマティクスの事業化を推進しています。東工大一杉教授との共同研究で生まれたベイズ最適化アプリは、複雑なシミュレーションを不要とし、現場の実験データから即座に最適条件を導出できる点が大きな特徴です。直感的なユーザーインターフェースを持つこのアプリは、研究者や技術者が手軽に使いながら現場のフィードバックを反映し、迅速な評価サイクルと事業価値の創出を可能にします。
三井情報は、東工大と共同でベイズ最適化を活用したマテリアルズ・インフォマティクスの試作版アプリを開発。ベイズ最適化は、既知のデータと未知領域をバランスよく探索する手法で、このアプリは材料の特性や合成条件などの複雑な組み合わせを解析します。試作版は材料研究者に提供され、フィードバックを基に実用化を目指しています。
従来型の材料開発と比較し大幅な開発期間の短縮ができたMIの事例は国内外問わず多数報告されており、企業の研究開発プロセスを飛躍的に改善し、競争力を高めることができるため、MIを導入する価値は非常に高いといえます。ここでは国内の企業のMIの成功事例をご紹介します。
専門領域を持っているMIベンダーを厳選しました。
自社の研究対象に近しい領域を専門としているMIベンダーの方が、
コミュニケーションにズレがなく、知見や実績も豊富な可能性があります。
化学・素材分野で数多くの開発を成功に導いた実績があります。
日立グループ全体の強みを活かして材料開発を総合的に支援できることから、早期の市場参入を可能にします。
富士通では、創薬に特化したプラットフォームを用意。特許読解、法規制物質チェックにも一貫して対応可能。
特定の材料開発プロセスではなく、創薬研究プロセス全体のDXが叶う点も魅力です。
新しいエネルギー材料の特性を正確に予測する「Mat3ra」(旧Exabyte.io)プラットフォームを提供。
新しいバッテリー材料や軽量合金の開発をスピーディーに進められることが可能です。