ものづくりの現場では、限られた時間とコストの中でより高い品質を追求することが求められます。特にケーブルや電子部品など、高い信頼性が不可欠な製品では、試作と評価を繰り返す従来の方法では時間がかかりすぎることが課題でした。そこで注目されるのが、計算科学やデータサイエンスを活用して材料開発を効率化する「マテリアルズインフォマティクス(MI)」です。
このページでは、フジクラがマテリアルズインフォマティクス(MI)を基盤技術の一つと位置づけ、実際のケーブルシース開発に適用して大幅な効率化を実現した事例を紹介します。初心者にも分かりやすいよう、MIの特徴と成果、今後の展望を順を追って解説します。
フジクラでは、あるゴムシース材料の配合開発において、引張強度と伸びの両立が大きなハードルでした。さらに、基材となるベースゴムの供給不安も重なり、代替配合の確立を急ぐ必要が生じていました。通常、配合剤は14種類以上の組み合わせから成り立ち、それぞれを複数水準で試すと実験パターンは数百万通りにのぼります。
これを経験と勘に頼る「絨毯爆撃」的な手法で進めると、試行回数や期間、担当者の負荷が膨大になり、開発リソースが逼迫してしまう状況でした。複数の特性を同時に最適化する必要がある一方で、トレードオフ関係に悩むケースも多く、従来の手法では問題解決に時間を要していました。
この課題解決のため、フジクラは実験計画に「ベイズ最適化」をはじめとするMI手法を取り入れました。まず、既存の実験データから確率モデルを構築し、探索空間内で次に試すべき条件の価値を示す獲得関数を算出。UMAPによって可視化した条件空間から、獲得関数が最大となる点を順次実験し、モデルを更新するサイクルを繰り返しました。
その結果、従来は最大120回を要していた実験が約30回に削減され、開発期間は最長12か月から3か月へと大幅に短縮。さらに、配合立案にかかる担当者工数も従来の約4人月から1人月相当にまで軽減できました。
加えて、モデルが提示した条件の中には、経験則に頼っては見落としがちな新たな組み合わせも含まれ、実際に試したところ良好な特性が得られることが判明。MIは単なる効率化手段にとどまらず、研究者に新たな着想をもたらすツールとしての効果も示しました。
参照元:フジクラ公式HP https://www.fujikura.co.jp/research/pdf/technical-report/136/136_R1.pdf
フジクラでは、マテリアルズインフォマティクス(MI)を新規材料開発にとどまらず、プロセスの最適化や品質管理といった領域にも活用の幅を広げる見通しです。材料エンジニアがデータサイエンスの知識を取り入れ、モデルの解釈性を高める取り組みも進んでいます。SHAPやPartial dependence plotなどのXAI技術を活用し、得られた知見を検証実験に反映させる仕組みを整備しているとのことです。
また、パーシステントホモロジーを用いた構造解析といった数学的アプローチも取り入れ、材料構造の定量化に挑戦しています。こうした取り組みにより、製品開発のスピードや精度の向上が期待されており、意思決定の高度化にもつながる可能性があると考えられます。
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