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カネカのマテリアルズインフォマティクス(MI)の成功事例

目次

マテリアルズインフォマティクス(MI)は、人工知能やデータ解析を活用し、素材開発の効率化や品質向上を実現する技術です。従来型の試行錯誤による手作業では多くの時間とコストがかかりますが、MIを導入することで膨大な実験データを高速に分析し、最適な条件を予測できるようになります。

カネカは2023年度から国内工場においてDXに約150億円を投資し、製造コスト削減と労働生産性向上を目指してきました。こうした投資の一環として、AIプラットフォームの開発や高度データ解析人材の育成に着手し、2030年までに創造型業務の比率を70%に高めるビジョンを掲げています。

本記事では、同社が独自開発したAIシステムを使い、樹脂プラントの連続乾燥設備を最適運転させて年間100トンの増産を実現した事例を中心に、導入前の課題、具体的成果、今後の展望を初心者向けに解説します。

カネカが抱えていた課題

カネカは多様な樹脂素材の開発・製造において、連続乾燥設備の最適運転が大きなボトルネックでした。従来はオペレーターが温度や排気湿度の条件を手動調整し、設定ノウハウに依存した運転管理を続けていたため、新人では対応が難しく、頻繁な変更に追いつけず蒸気使用の無駄や品質バラつきが発生していました。

また、各工場で重複したシステム開発が行われ、低コストで短期間に改善する統一的な仕組みが不十分でした。さらに、膨大な運転データを一元管理するプラットフォームがなく、AIモデルの作成から劣化監視までの運用体制が整備されていない点も生産DXの妨げとなっていました。

加えて、2018年に開始した高度データ活用技術者教育は進んだものの、研修後のテーマ選定やノウハウ伝承を横断的に展開する仕組みが不十分で、スケーラブルな運用体制を築けていませんでした。これらを放置するとDX投資の効果が十分に発揮されない懸念がありました。

マテリアルズインフォマティクス導入で出した成果

カネカはDataikuを基盤としたAIプラットフォームを導入し、連続乾燥設備の最適運転を自動化しました。まず既存の温度設定値や排気湿度などの運転データを専用ロガーで収集し、前処理した上でAIが中間体供給量と蒸気温度を高精度に予測しました。

次に、これらの予測結果を基に最適な設定値を自動算出し、制御システムへリアルタイムで反映させる仕組みを構築しました。その結果、蒸気使用量を抑制しつつ生産量を安定化できるようになり、年間で約100トンの増産を達成しました。

また、品質のばらつきが低減し、運転管理の標準化によって属人化が解消しました。さらに、このAIシステムは従来のスクラッチ開発に比べてコストを半分以下に抑えつつ、国内5工場への段階的展開にも成功しています。

加えて、高度データ活用技術者教育を通じて100名以上の技術者が育成され、100件超のテーマが実業務へ適用されるなど、各現場でのDX推進速度が飛躍的に向上しました。

参照元:Monoist  https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2410/29/news008.html
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2311/15/news068_2.html

今後の展望

カネカは国内全工場でのAIプラットフォーム展開を2025年度末までに完了させる計画を進行中です。さらに、生成AIを活用した電子実験ノートの横断要約機能を試験運用し、自然言語による検索を実現しようとしています。

OCR連携による過去紙資料のデジタル化や、Pipeline Pilotとの連携強化による多変量解析自動化にも着手し、研究開発と生産現場でのデータ利活用が一段と深化する見込みです。

加えて、全社規模でDXリテラシー教育プログラムを展開し、AI導入の早期定着を図ります。将来的には研究開発DXと生産DXを融合させた統合プラットフォームを確立し、品質改善と新素材開発の加速を通じてグローバル競争力の強化を目指しています。

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