住宅部材や電子材料を長年手がけてきた積水化学は、製品ライフサイクルの短縮や求められる性能の多様化によって、従来の材料開発手法が追いつかなくなる局面を迎えました。そこで注目されたのが、AIやデータ解析を活用する「マテリアルズインフォマティクス(MI)」です。本稿では、積水化学が直面した背景と、MI導入による具体的な成果、そして今後の展望をわかりやすく解説します。
パソコンやスマートフォンといった電子機器の進化サイクルが速まる中、材料開発にも短期間で結果を出すことが求められました。以前は数年単位で進めていた実験や評価が、現在では半年から1年程度で完了しなければなりません。 一方で、耐久性やリサイクル性といった相反する性能を同時にかなえる材料設計は手作業では限界があります。
研究者はこれまで、自身の経験をもとに数十万通りの配合や合成手順を絞り込んできましたが、その中には重複した実験や見落としも多く、効率化が急務となっていました。
積水化学はまず、研究者が個別に保有していた過去の実験データを一元化してデータベース化しました。そこにAI予測モデルを組み合わせることで、材料設計に要する時間は従来の数カ月から数時間へと劇的に短縮。具体的には、フィルム材料の設計工程を従来の約900倍速くし、5カ月かかっていた作業をわずか4時間で終えられるようになりました。
また、過去に行われた類似実験の情報を漏らさず活用できるため、無駄な重複が減り、研究者は本来の創造的な検討に集中できるようになりました。さらに日立との協創により、実験装置からのデータ収集や仮想空間でのデジタルツイン技術にも着手。
これにより、物理的に難しかった評価項目を得られる可能性が開けつつあります。
参照元:日立公式HPhttps://www.hitachi.com/ja-jp/insights/articles/materials-informatics/
今後は、マテリアルズインフォマティクス(MI)の適用領域を「材料設計」だけでなく「実験計画」「評価手法」へと広げ、開発プロセス全体をデジタル化していく計画です。装置やセンサーから得られる高精度データを連携させることで、仮想実験と現実実験のシームレスな往来が見込まれています。また、社外の研究機関や公開データを取り込むことで、社内データと組み合わせた相乗効果も期待されます。
こうして従来には難しかった性能の両立や新機能素材の創出が加速し、材料開発の常識が書き換えられる日も近いでしょう。
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日立グループ全体の強みを活かして材料開発を総合的に支援できることから、早期の市場参入を可能にします。

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