マテリアルズインフォマティクス ベンダー特集

東レのMIの成功事例

目次

東レはマテリアルズ・インフォマティクス(MI)を活用し、データ解析とシミュレーション技術を統合した材料開発を推進しています。炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の開発では、MIによる解析で開発期間を大幅に短縮しました。

東レが抱えていた課題

東レは、航空機に使われる繊維強化プラスチック(CFRP)の開発に取り組んできました。しかし、CFRPの開発にはいくつかの課題があります。まず、炭素繊維は非常に軽量で強度が高い一方、耐熱性や難燃性を同時に向上させるのが困難でした。また、従来の材料開発手法では、新素材の設計や評価に多くの時間とコストがかかっていたため、開発期間が長くなる問題もあります。

航空機や自動車の分野では、軽量化だけでなく、安全基準を満たすために難燃性が求められるため、CFRPの性能バランスを保ちながら開発するのは非常に難しい課題です。

材料の複雑さが増す中で、これまでの経験や勘に頼る開発では限界がありました。このような背景から、東レはMI技術に注目し、AIやデータ解析を活用して材料開発のプロセスを最適化し、効率を高める取り組みを進めています。

MI導入で出した成果

従来は長期間かかっていた新素材の開発が、MIを用いることで短期間で実現。MIによってデータ解析とシミュレーションを駆使し、強度や難燃性などの特性を持つ材料の設計が可能となりました。航空機や自動車向けに耐熱性が高く軽量な材料を提供することができ、アルミ板からの代替品として期待されています。

この成果を可能にしたのは、東北大学から導入した「自己組織化マップ」と、ミクロスケールからマクロスケールまでをカバーする「マルチスケールシミュレーション」の連携です。自己組織化マップを使うことで、膨大なデータを可視化し、効率的に新素材の特性を解析できるようになりました。また、マルチスケールシミュレーションによって、材料の物理的特性を多角的に解析し、より適切な材料設計を導出することが可能となりました​。

こうした成果は、材料開発のスピードアップだけでなく、開発コストの削減にもつながり、企業の競争力を高める重要な役割を果たしています。

参照元:東レ公式HP https://www.toray.co.jp/news/details/20211129150738.html

今後の展望

今後、東レはMI技術をさらに幅広い分野で展開していく計画を立てています。航空機や自動車向けの材料だけでなく、一般産業用途や電気・熱伝導性材料にもMI技術を応用し、多様化するニーズに応えていく予定です。

さらに、東レは「デジタルものづくり」の一環として、グローバルなデータ基盤を構築し、研究開発から生産、販売に至るまでのバリューチェーン全体をリアルタイムで管理・連携するシステムを整備しています。

加えて、デジタル人材の育成にも力を入れており、2000人以上のデジタル人材を確保し、現場とデジタル技術に精通したリーダーを育成する取り組みを進めています。このような取り組みによって、東レは今後も材料開発の効率化と高度化を推進し、競争力を一層強化していくと考えられます​​。

専門的な領域を持つMIベンダーを選ぶ重要性

MIベンダーの中には、専門領域を持つ企業があります。各ベンダーが保有するデータの質と量は解析精度に大きく影響し、研究開発のスピード向上やコスト削減につながります。そのため専門領域で強みを持つベンダーのMIを選ぶことが重要です。

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