サムスン電子は、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)を活用し、全固体電池向けの固体電解質を短期間で開発することに成功しました。従来は数年かかる研究プロセスを、データサイエンスを駆使してわずか1年で成果を出し、電池性能の向上を実現しています。
サムスン電子とマサチューセッツ工科大学(MIT)は、2012年にMIを活用し、約1年という短期間で高性能な全固体電池向け固体電解質を開発しました。
全固体電池とは、従来のリチウムイオン電池に使用される液体の電解質を、固体の電解質に置き換えた次世代型の電池です。
従来の液体電解質に代わる固体電解質の発見により、バッテリーの寿命や安全性を飛躍的に向上させることができました。また、液体電解質は、過充電や外部からの衝撃によって発火や爆発のリスクが存在します。これに対し、全固体電池は不燃性の固体電解質を使用するため、より高い安全性が期待されています。
MIはこれまで蓄積された膨大なデータを整理し、適切な開発プロセスを導き出す力を持っています。この技術を活用することで、サムスン電子のような企業は、これまでの経験を活かしつつ、新たな価値創造を実現しました。
参照元:経済産業省 https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shinsangyo_kozo/pdf/016_05_00.pdf
一方、日本企業は、同様の研究において従来の手法を使用しており、5年ほどの期間を要しました。
固定電解質の特許出願はタッチの差で先んじることはできましたが、サムスン電子のMIを活用した固体電解質の開発には衝撃を与えました。
従来の材料開発プロセスが複雑であり、実験と失敗を繰り返しながら進める必要があったことが要因として挙げられます。日本の企業は伝統的なアプローチを重視する傾向があり、そのために開発期間が長くなったと考えられます。
サムスンがMIを活用したことで短期間で成果を上げたのに対し、日本企業も後にMIを取り入れ、国立研究法人物質・材料研究機構(NIMS)が中心となって開発プロジェクトを進めてきました。日本企業もデータサイエンスを活用し、全固体電池用の材料開発を加速させる取り組みを強化しつつあります。
サムスン電子の成功は、世界的にMI技術への関心を高め、日本企業もMIを積極的に導入するようになっています。
サムスン電子とMITの全固体電池向け固体電解質の開発事例は、MIがいかに研究開発を効率化し、短期間で成果を生む力を持っているかを示しています。従来の手法と比較すると、そのインパクトは明確であり、日本企業も今後MIを活用して、さらなる技術革新を進めていくことが期待されています。
今後、MIの導入がさらに広がることで、材料開発は従来の試行錯誤に基づく手法から、より効率的なデータ駆動型のアプローチへと移行していくでしょう。
MIベンダーの中には、専門領域を持つ企業があります。各ベンダーが保有するデータの質と量は解析精度に大きく影響し、研究開発のスピード向上やコスト削減につながります。そのため専門領域で強みを持つベンダーのMIを選ぶことが重要です。
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