近年、製造業界では製品開発のスピードと品質を両立する手段として、マテリアルズインフォマティクス(MI)の導入が注目を集めています。中でも日本ガイシが手掛けるセラミック製品へのAI活用事例は、実装までの具体的ステップが明確な好例と言えます。
従来、高精度解析には専門チームが長時間かけてシミュレーションを行う必要がありました。しかし、AI技術を活用することで、必要な精度を維持しながら解析期間を大幅に短縮することに成功しています。
日本ガイシは自動車排ガス浄化用などのセラミック製品を取り扱っています。これらの製品は高い耐久性と信頼性が求められるため、時間を要する実験やシミュレーションでの検証を念入りに繰り返す必要がありました。
名古屋大学やアイクリスタルとの共同開発により、シミュレーションをAIで代替できる道筋が見えてきましたが、当初は「製品特性を十分に再現できるモデルをどう構築するか」が最大の懸念点でした。さらに、実用性を担保するためには専門知識の少ないエンジニアでも利用しやすいインターフェースが必要であり、技術力とユーザビリティを両立させる難易度が高かったのです。
今回、名古屋大学 宇治原研究室が有していた結晶育成法のAIモデルをセラミック製品向けに改良し、アイクリスタルが高精度化とインターフェース実装を担当しました。それを日本ガイシが主力事業で検証した結果、従来は解析完了まで1~2週間を費やしていたシミュレーションが、最短1日に短縮される見通しが立ちました。
これは高い精度を保ちつつ、PCの負荷も軽減して利用しやすくしたためです。具体的には、データセットの構築やアルゴリズムの最適化などに注力し、高度な専門知識を要せずに操作できる点が高く評価されています。解析効率の向上により、試作品の検証や量産プロセスの迅速化も期待できるようになりました。
参照元:日本ガイシ公式HP https://www.ngk.co.jp/news/2024/20240624_1.pdf
日本ガイシは、このAI技術を実際の設計プロセスに組み込み、さらなるリードタイム短縮や製品の信頼性向上を目指しています。また、本技術は他のセラミック製品にも横展開できることから、事業領域の拡大やカーボンニュートラルなどの社会課題対応にも貢献する見込みです。
共同開発に携わった名古屋大学は、研究成果の社会実装を進める好例として位置付けられており、大学発スタートアップであるアイクリスタルはプロセスインフォマティクスを活用した最適化サービスを広く提供していく計画です。今後は、製造業全体へのMI普及が進む中で、日本ガイシのケースが成功モデルとして注目を浴びる可能性があるでしょう。
MIベンダーの中には、専門領域を持つ企業があります。各ベンダーが保有するデータの質と量は解析精度に大きく影響し、研究開発のスピード向上やコスト削減につながります。そのため専門領域で強みを持つベンダーのMIを選ぶことが重要です。
専門領域を持っているMIベンダーを厳選しました。
自社の研究対象に近しい領域を専門としているMIベンダーの方が、
コミュニケーションにズレがなく、知見や実績も豊富な可能性があります。
化学・素材分野で数多くの開発を成功に導いた実績があります。
日立グループ全体の強みを活かして材料開発を総合的に支援できることから、早期の市場参入を可能にします。
富士通では、創薬に特化したプラットフォームを用意。特許読解、法規制物質チェックにも一貫して対応可能。
特定の材料開発プロセスではなく、創薬研究プロセス全体のDXが叶う点も魅力です。
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