JSRは、半導体材料をはじめとする多様な先端素材を手がける企業として知られています。特に、さまざまな原料を組み合わせて生み出す複合材料の開発に強みを持っていますが、その一方で材料開発には膨大な時間と労力が必要でした。
近年、これらのプロセスを効率化する鍵として注目されているのがマテリアルズ・インフォマティクス（MI）です。MIとは、化学や物理の知見にデータ科学を組み合わせて、新素材の探索や機能評価を高速化する手法のことです。JSRはこのMIに積極的に投資し、東京大学などの研究機関と連携しながら、次世代メモリー材料などの分野で顕著な成果をあげています。
従来の材料開発は、多彩な材料の組み合わせを試行錯誤しながら検証する必要がありました。その数は理論的には天文学的な組合せにのぼるため、見通しを立てにくく、どれほど時間と費用をかければ目標特性に到達できるのか分からないという問題がありました。
さらに、研究が高度化するにつれ、理論計算や固体物理の専門知識が不可欠になります。そこで、JSRは膨大なデータを分析・活用できる環境を整え、研究と開発の現場がよりスムーズに連携できるよう取り組む必要に迫られたのです。
この課題を乗り越えるためにJSRが導入したのが、最先端のアルゴリズムを搭載した独自のMIツールです。大学との共同研究や外部の研究機関との連携を通じて、より高度な分析手法を開発するとともに、現場の開発担当者が日常的に使いやすいシステムとして内製化を進めています。
特に大きなトピックとなっているのが、タングステン結晶をらせん状に歪めた構造で発生する巨大スピン流の予測です。このような革新的な発見が実現した背景には、理論計算と実験計画を密接に組み合わせるMIの強みがありました。これにより、新材料の開発速度が劇的に向上し、研究者の負担も大幅に軽減されたのです。
参照元：JSR公式HP https://www.jsr.co.jp/resource-files/pdf/ir/library/annual_csr_report/2023/02_07_2023_j.pdf
今後は、MIツールをさらに発展させ、最新のデータ分析技術やAIアルゴリズムを積極的に取り込む方針です。たとえば、大学とのオープンイノベーションの枠組みを活用して、まったく新しい素材設計の可能性を探る試みが進んでいます。
最終的には、MIツールが社内外を問わず「当たり前に使われる環境」を確立し、複合材料の開発プロセスを根本から変えていくことが目標です。JSRは、社会課題の解決にも寄与する新たな材料イノベーションを通じて、より持続可能な未来を切り開く意気込みで、研究と開発を加速させていくと期待されています。
MIベンダーの中には、専門領域を持つ企業があります。各ベンダーが保有するデータの質と量は解析精度に大きく影響し、研究開発のスピード向上やコスト削減につながります。そのため専門領域で強みを持つベンダーのMIを選ぶことが重要です。
専門領域を持っているMIベンダーを厳選しました。
自社の研究対象に近しい領域を専門としているMIベンダーの方が、
コミュニケーションにズレがなく、知見や実績も豊富な可能性があります。
化学・素材分野で数多くの開発を成功に導いた実績があります。
日立グループ全体の強みを活かして材料開発を総合的に支援できることから、早期の市場参入を可能にします。
富士通では、創薬に特化したプラットフォームを用意。特許読解、法規制物質チェックにも一貫して対応可能。
特定の材料開発プロセスではなく、創薬研究プロセス全体のDXが叶う点も魅力です。
新しいエネルギー材料の特性を正確に予測する「Mat3ra」(旧Exabyte.io)プラットフォームを提供。
新しいバッテリー材料や軽量合金の開発をスピーディーに進められることが可能です。