住友化学は、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)を活用し、データに基づく材料開発を進めています。従来の実験手法では対応が難しかった課題に対し、MIを導入することで、開発の効率化とスピードアップを実現。さらなる可能性を見出しています。
住友化学がMIを導入した背景には、急速に変化する市場のニーズと開発スピードの課題がありました。さらに、異業種が材料開発に進出してきたことも大きな影響を与えます。
ソフトバンクが電池開発に投資したり、トヨタ自動車が全固体電池の開発に取り組んだりしていることが、材料業界に危機感をもたらしました。これまで培ってきた知識や経験だけでは、競争で生き残れないのではないかという強い不安が生じ、住友化学は機械学習を活用したデータ駆動型の材料開発への転換を決断しました。
従来の材料開発は、研究者が実験を重ねながら進める方法が主流でしたが、急速に変化する市場と異業種からの圧力に対応するため、効率化と高速化を図るためにMIの導入が進められたのです。
住友化学がMIを導入したことで、従来の方法では困難だった材料開発が飛躍的に効率化しました。
成果の一つとして、耐熱性ポリマーの開発があります。この開発では、13種類のモノマーを使用して共重合体の最適な組成比を見つける必要がありましたが、その組み合わせは100万通りにも及びました。従来の実験手法では、この膨大な数の実験は現実的ではありません。
そこで、MIを活用して「ベイズ最適化」という機械学習の手法を用い、データをもとに効果的な組み合わせを予測しながら実験を進めました。結果として、わずか4回のサイクルでより適切な共重合体を見つけることができ、実際の実験回数はわずか10〜20回に抑えられました。これは100万分の10~20の確率で効率的に素早く最適解を見つけたこととなり、MIによる開発スピードの大幅な向上を示しています。
この開発では、研究者が従来の経験や知識からは予想できなかった新しい組み合わせが発見されたことも注目すべき点です。これまでの方法では見逃していた可能性のある組み合わせをMIが導き出し、革新的な材料の開発につながったのです。
参照元:日経XTEC https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00026/00043/?P=2
住友化学はMIを導入し、大きな成果を上げていますが、今後さらにMIを使いこなすためにはいくつかの課題があります。その一つがデータの扱いです。MIは、機械学習を活用するために多くのデータを必要としますが、社内でのデータ形式の統一やデータベースの整備が進んでいないことが大きな問題となっています。
また、データサイエンティストの育成も重要な課題です。MIの分野で活躍するには、材料の専門知識が必要であり、単にデータを扱えるだけでは不十分です。そのため、住友化学では、化学や物理の知識を持った人材を積極的に採用し、MIと他の科学分野を統合した開発サイクルを回すことで、さらなる成果を目指しています。
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