巴川コーポレーションでは、製品設計における原料や製造条件の最適化を、長年ベテラン開発者の経験と勘に頼って行ってきました。
しかし、多品種少量の製品を素早く市場投入することが求められる中、開発スピードと人材育成のバランスに限界が訪れていました。
若手の育成には数年単位の時間を要し、十分な知見を持つまでに多くのトライ&エラーが必要となる状況だったのです。
このような背景から、同社は「ベテランの知見を形式知化し、再現可能なかたちで若手に継承できる仕組み」を必要としていました。
同時に、材料開発プロセスの標準化と効率化により、製品化までのリードタイム短縮も狙いとして掲げていました。
それを実現する手段として選ばれたのが、日立ハイテクのMIツールとカスタマーサクセスによる分析支援サービスでした。
社内では、材料ドメイン知識を持つ開発者がツールを使いこなすためのサポートが不足しており、MIの定着に大きな壁がありました。
データはあるものの、整備や分析のノウハウが属人化していたため、既存ツールだけでは現場での活用が進まなかったのです。
特に若手エンジニアにとっては、初期設定やアルゴリズムの理解がハードルとなり、「使えるけど使いこなせない」状態が続いていました。
こうした課題を解決するために、日立ハイテクのデータサイエンティスト(高原氏・岡田氏ら)が伴走支援を実施。
材料開発に特化した分析設計のフロー構築から、実際のデータを用いたハンズオン形式の指導まで、一貫して現場に入り込んだ支援が行われました。
特徴量の選定や分析モデルの解釈といった高度な内容も、開発メンバーが理解できるよう分かりやすく説明し、ツールを「使う」ではなく、「成果を出す」ための思考法まで落とし込んだ点が大きなポイントでした。
特筆すべきは、製品設計の経験が浅い若手エンジニアが、わずか2~3ヶ月という短期間でMIツールを活用し、ベテランと同等の設計判断ができるようになった点です。
ツールが示す予測や指標は、熟練者の勘と一致するものが多く、「MIを通じてベテランの思考を再現できた」という実感が現場に広がりました。
結果として、属人化していた知見が可視化・形式知化され、他の若手メンバー約10名にも同様のナレッジが展開され始めています。
また、開発全体のスピードも加速し、従来よりも約30%早く市場に製品を投入できる体制が整いつつあります。
「専門知識がない人でもMIを使い、結果を出せる」という仕組みが実現されたことで、社内の人材育成とDXが同時に前進した事例といえます。
参照元:日立ハイテク公式サイト https://www.hitachi-hightech.com/jp/ja/products/ict-solution/randd/cacestudy/001.html
マテリアルズインフォマティクス(MI)は、AIやデータ解析を活用した新しい材料開発手法として注目され、数多くの企業が導入を進めています。 しかし、実際には「導入したけれど活用しきれなかった」「社内で定着しなかった」といった失敗も少なくありません。 その背景には、社内のデータ整備の難しさ、分析に必要なノウハウの属人化、ツールを使いこなすまでの教育・定着の壁など、共通の課題が存在しています。
本ページでは、こうした課題に対して実際にMIを導入・運用し、成果を上げた事例を紹介しています。 なかでも「属人性の解消」「若手の育成」「現場での定着」といった、従来のMI導入で障壁となりがちなポイントにおいて、明確な成果を実現した事例も取り上げており、 MIの“失敗しない導入”を支援するヒントをお届けします。
トヨタ自動車株式会社では、マテリアルズインフォマティクス(MI)を活用した高性能材料のデータ駆動探索が未整備だったため、従来の経験則中心の手法では時間とコストがかかり、軽量化や燃費向上に資する新素材開発が滞っていました。
マテリアルズインフォマティクス(MI)を導入する前は、強度・耐久性・熱耐性など多様な条件を同時に満たす素材候補の試験を繰り返すうちに、データ蓄積や分析にも膨大な時間を要し、効率的な次素材開発が難航していました。
トヨタでは、マテリアルズインフォマティクス基盤として「WAVEBASE」という社内プラットフォームを構築し、AI/ビッグデータ解析を通じて材料特性を事前シミュレーションし、開発効率を向上させました。
旭化成では、マテリアルズインフォマティクス(MI)によるデータ駆動型の材料探索基盤を整備する以前は、従来の経験則と手作業中心のアプローチに頼っていたため、新材料開発に多大な時間とコストがかかり、プロジェクト全体のサイクルが長期化していました。
マテリアルズインフォマティクス(MI)未導入の状態では、実験や分析を繰り返して得られた膨大なデータを適切に統合・解析できず、最適な材料設計条件を探索するための試行錯誤に過度の工数を要していました。
そこで旭化成は、マテリアルズインフォマティクス(MI)を本格導入し、AIとデータサイエンスを活用して次世代セルロース膜をベースとしたウイルス除去フィルター「プラノバS20N」の材料特性予測と最適設計を、データ解析によって効率的に実現しました。
住友化学では、マテリアルズインフォマティクス(MI)を活用する前は、急速に変化する市場ニーズや異業種からの参入圧力に対応するための従来の経験則中心の材料開発手法だけでは迅速な製品化が難しく、開発スピードと効率の改善が求められていました。
13種類のモノマーによる共重合体組成の組み合わせが100万通りに上り、マテリアルズインフォマティクス(MI)導入前の従来手法では膨大な試行錯誤が必要で開発期間が長期化していました。
住友化学は、マテリアルズインフォマティクス(MI)手法としてベイズ最適化を導入し、データ駆動で100万通りの組み合わせを解析。わずか4サイクルで最適な共重合体組成を予測し、実験回数を大幅に抑制しました。
東レでは、マテリアルズインフォマティクス(MI)を活用することで航空機用CFRPの高性能材料開発を推進してきましたが、導入前は従来の経験則中心手法での設計と評価に多大な時間とコストがかかっていました。
マテリアルズインフォマティクス(MI)未適用の状態では、安全基準を満たす難燃性と高強度・軽量性を同時に確保するための試行錯誤が必要となり、CFRP開発の研究サイクルが長期化していました。
東北大学発の自己組織化マップとマルチスケールシミュレーションを統合したマテリアルズインフォマティクス(MI)プラットフォームを構築し、AIとデータ解析で材料特性を可視化・多角的に解析することで、開発プロセスを最適化しました。
横浜ゴム株式会社では、マテリアルズインフォマティクス(MI)を活用する以前、次世代タイヤに求められる高性能化・環境適応性を実現するための材料開発プロセスが従来の試行錯誤中心であり、効率化とスピードアップが急務となっていました。
マテリアルズインフォマティクス(MI)未導入の段階では、多種多様なゴム配合パラメーターの最適化に膨大な実験と時間を要し、技術者の経験に依存した開発サイクルが長期化していました。
横浜ゴムは2017年にマテリアルズインフォマティクス(MI)を導入し、AIによる材料データ解析技術を確立しました。さらに2020年12月には配合物性値予測システムを実用化し、「HAICoLab」構想のもと、研究者とAIが協働する開発体制を構築しました。
ENEOSでは、マテリアルズインフォマティクス(MI)を導入する以前、従来の試行錯誤中心の研究開発に多大な時間とコストを要し、特に石油化学基盤の素材開発での高度な材料特性を実現するための膨大なデータ解析が大きな課題となっていました。
マテリアルズインフォマティクス(MI)未適用の状態では、実験データを効率的に統合・解析できず、試行錯誤型の開発プロセスが長期化しており、開発サイクルの短縮とコスト抑制が急務となっていました。
ENEOSは、マテリアルズインフォマティクス(MI)を活用し、AIとデータサイエンスに基づくデジタル技術を導入。実験データの迅速な解析により、材料特性の高精度予測モデルを構築し、高機能潤滑油素材の探索を短期間で実現しました。
NECは、マテリアルズインフォマティクス(MI)を導入する以前、従来の試行錯誤中心の材料開発プロセスに依存していたため、新材料探索の迅速化が困難でした。そこで東北大学と共同でマテリアルズインフォマティクス(MI)とAIを融合した新たな開発サイクルを確立しました。
マテリアルズインフォマティクス(MI)適用には高精度な材料データが不可欠でしたが、そのデータを効率的に収集・評価する技術基盤が不足しており、解析精度の向上を阻んでいました。
NECは、マテリアルズインフォマティクス(MI)のアプローチとして、東北大学材料科学高等研究所と連携し「異種混合学習技術」を開発しました。これによりAIが大量の材料データを学習・予測し、材料特性を迅速かつ正確に解析するワークフローを構築しました。
サムスン電子では、マテリアルズインフォマティクス(MI)を導入し、MITと共同で蓄積した材料特性データをフル活用する体制を整備しました。これにより、全固体電池向け固体電解質の研究開発プロセスを従来の数年から短期間で高速化しています。
従来の液体電解質から固体電解質への材料転換では、安全性・寿命向上に資する材料候補の選定に膨大な実験と時間を要し、研究開発期間が長期化していました。
サムスン電子は、マテリアルズインフォマティクス(MI)とデータサイエンスを駆使し、MITと共同で得た蓄積データを解析して最適な固体電解質候補を予測するワークフローを構築しました。
JSRでは、マテリアルズインフォマティクス(MI)を活用する以前、多様な先端複合材料の開発において試行錯誤に要する時間とコストが膨大で、新素材設計のスピードと効率性向上が大きな課題となっていました。
マテリアルズインフォマティクス(MI)未適用の段階では、材料組み合わせの理論数が天文学的で、理論計算や固体物理の専門知識に頼る試行錯誤型の開発プロセスでは非効率で時間とコストが増大していました。
JSRは、マテリアルズインフォマティクス(MI)技術を導入し、東京大学などと連携して独自のMIツールに最先端アルゴリズムを搭載しました。大学や研究機関との共同研究を通じ、高度な分析手法を開発するとともに、現場の開発担当者向けに使いやすいプラットフォームを内製化しました。
日本ガイシでは、マテリアルズインフォマティクス(MI)を活用する以前、自動車排ガス浄化用セラミック製品の高い耐久性・信頼性を確保するために専門チームが長時間の実験やシミュレーション検証を繰り返しており、製品開発に多大な時間を要していました。
マテリアルズインフォマティクス(MI)未導入の状態では、製品特性を十分に再現できる高精度モデル構築と、専門知識の少ないエンジニアでも扱えるユーザーインターフェースを両立させることが難しく、AIモデル導入のハードルが高い状況でした。
日本ガイシは、マテリアルズインフォマティクス(MI)の一環として、名古屋大学宇治原研究室の結晶育成AIモデルをセラミック製品向けに改良し、アイクリスタルによる高精度化とユーザビリティ強化を実装しました。このMIシステムを自社の検証環境に統合し、シミュレーションから解析まで一貫したデータ駆動型ワークフローを構築しました。
日本ゼオンでは、マテリアルズインフォマティクス(MI)を活用して解析依頼対応を効率化する前は、年間数十件の解析依頼を基盤技術研究所(基盤研)が担い、前処理や統計解析に多大な工数を割いていたため、研究員が高度なモデリングに集中できない状況でした。
マテリアルズインフォマティクス(MI)未導入の状態では、主剤・添加剤・充填剤などの複雑な変数組み合わせが数千パターンに及び、手作業での変数選択では重要因子の見落としや解析精度の低下が課題となっていました。
日本ゼオンは、マテリアルズインフォマティクス(MI)プラットフォームとして2017年にdotDataを全社導入し、GUI操作だけで特徴量抽出からモデリングまで一気通貫で自動化しました。基盤研と現場研究員が自らデータ解析を実行できる体制を整備し、“データ民主化”を推進しました。
住友電工では、マテリアルズインフォマティクス(MI)による新素材探索や製造プロセス高度化を目指していましたが、導入前はオンプレミス環境では膨大な計算資源を要する物性予測に対応しきれず、開発期間短縮には柔軟かつ高速な計算基盤が求められていました。
マテリアルズインフォマティクス(MI)未適用の状態では、電解液粘度や高分子密度のシミュレーションに1回あたり数日~1週間以上を要し、同時並行実行が困難で試験パターン数に限界がありました。さらに、共同開発にはコード・データ共有環境が不可欠ですが、オンプレミスではメモリ・GPU性能不足やストレージ制限があり、ハード調達にも長期間を要して研究推進を阻んでいました。
住友電工は、マテリアルズインフォマティクス(MI)基盤としてRescaleのクラウドHPCプラットフォームを採用し、コンテナ環境でオープンソースシミュレーションソフトや自社開発プログラムを実行可能にしました。MPIを活用した大規模並列計算のPoCを迅速に達成し、プログラムのコンテナ移行も円滑に完了させることで、MIに必要な高速でスケーラブルな解析基盤を構築しました。
カネカでは製造コスト削減と労働生産性向上を目的に国内工場へDX投資を行い、AIプラットフォーム開発やデータ解析人材育成に取り組んでいました。
連続乾燥設備の運転管理はオペレーターの手動調整に依存しており、蒸気使用の無駄や品質バラつきが発生していました。各工場で重複開発が進み、統一的なデータ管理基盤とスケーラブルな運用体制が整っていない状況でした。
カネカはマテリアルズインフォマティクス(MI)の考え方を取り入れ、Dataikuを基盤としたAIプラットフォームを導入し、運転データを収集・前処理したうえでAIが中間体供給量と蒸気温度を高精度に予測し、最適設定値をリアルタイムに制御システムへ反映しました。
京都大学の材料工学分野では、熱制御材料の新規探索において既知物質の改良が中心で、新規物質発見には長期間と高コストがかかり、研究範囲の拡大が困難でした。
低熱伝導材料開発では、第一原理計算と実験を繰り返す必要があり、スーパーコンピュータ資源の利用競合や属人化した知見によって研究サイクルが長期化していました。
量子力学的第一原理計算で約100物質の熱伝導度を算出し、その高精度データを機械学習モデルに学習させたうえで、ICSD登録の約5万5千物質をバーチャル・スクリーニングでランキングするワークフローを構築しました。
積水化学では、スマートフォンや電子機器などのライフサイクル短縮により、材料開発にかけられる時間が年々圧縮されていました。一方で、環境性能や強度、リサイクル性など、求められる素材の条件は複雑化し、従来の経験や手作業を中心としたアプローチでは対応が難しくなっていました。
研究者が過去の経験や勘をもとに設計していたため、試行錯誤に多大な時間と労力がかかり、同じような実験を重複して行ってしまう事例もありました。また、実験データは個人に属していることが多く、社内全体での共有・再利用が難しいという課題もありました。
積水化学は、マテリアルズインフォマティクス(MI)を本格導入し、研究者の過去の実験データを収集・構造化。その上でAIによる材料設計予測モデルを構築しました。加えて、日立製作所と連携し、データ収集の自動化やデジタルツインによる仮想実験にも着手しています。
日東電工(以下 Nitto)は、絶縁材料や高機能素材を手がける老舗企業として、製品開発のスピード向上と品質向上を常に追求してきました。しかし伝統的な材料開発では、試作と評価をくり返す手法に多大な時間とコストがかかり、開発ペースが思うように上がらないというジレンマを抱えていました。そこで Nitto が着目したのが、AI や機械学習を活用して材料設計や特性予測を効率化する「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」です。日立製作所は MI に特化したコンサルティングと、実験データ解析のための環境をセットで提供する体制を整えており、Nitto の研究開発本部データサイエンスグループと協働しながら、MI 活用の第一歩を踏み出しました。
従来の材料開発では、実験データそのものが限られているうえ、扱うパラメータや条件が多岐にわたるため、データ数は十数件というケースが珍しくありません。データサイエンティストの立場からすれば取り扱いにくく、AI モデルの精度を高めるには不十分な状況でした。さらに、材料開発担当者とデータ分析担当者では専門用語や考え方が異なるため、両者のコミュニケーションには時間を要し、意思決定のスピードを妨げる要因となっていました。社内で MI を活用しようにも、分析基盤が汎用ツールに頼る形式では、現場の研究者が自ら操作しにくいとの声も上がっており、導入への心理的・技術的ハードルが高い状態でした。
日立の提供する「材料データ分析環境」は、Microsoft® Excel® のような操作性で AI 解析を可能にするプラットフォームです。Nitto はこの環境と、日立のコンサルティングサービスを組み合わせることで、材料開発部門の誰もが自ら解析できる体制を整備しました。さらに、日立のデータサイエンティストが材料開発とデータ分析の間に立つことで、意思決定の迅速化を実現。新入社員教育にもこの環境を導入することで、MI 活用の裾野を社内全体に広げています。
専門領域を持っているMIベンダーを厳選しました。
自社の研究対象に近しい領域を専門としているMIベンダーの方が、
コミュニケーションにズレがなく、知見や実績も豊富な可能性があります。
化学・素材分野で数多くの開発を成功に導いた実績があります。
日立グループ全体の強みを活かして材料開発を総合的に支援できることから、早期の市場参入を可能にします。
富士通では、創薬に特化したプラットフォームを用意。特許読解、法規制物質チェックにも一貫して対応可能。
特定の材料開発プロセスではなく、創薬研究プロセス全体のDXが叶う点も魅力です。
新しいエネルギー材料の特性を正確に予測する「Mat3ra」(旧Exabyte.io)プラットフォームを提供。
新しいバッテリー材料や軽量合金の開発をスピーディーに進められることが可能です。