組成開発とは、製品を作る際に成分や材料を決定する開発プロセスの1つです。ここでは、ハミガキを主力事業とする大手企業・ライオンが、マテリアルズ・インフォマティクスを活用して、組成開発期間を約半分に短縮する実験計画手法を確立した事例を紹介します。
従来のライオンの組成開発は、研究データや研究員の知見を基にして、膨大な組み合わせの中から候補となる組成を考案し、実験を繰り返したうえで組成を絞り込んでいました。しかし、新規成分の配合や品質項目の追加を伴う開発テーマの場合、研究データや研究員の知見では足りません。ライオンは生産性を上げる目的で、マテリアルズ・インフォマティクスの活用に踏み切りました。まずはマテリアルズ・インフォマティクスの知識を持つ人材を育成し、主力事業であるハミガキの組成開発に活用できる実験計画手法の確立に向けた研究をスタートしたのです。
ハミガキの組成開発では、使用感に大きく影響する香りや味、泡立ち、ペーストの固さ、滑らかさなどをクリアする必要があります。さらに、虫歯や歯周病を予防する機能も欠かせません。
ライオンはこれらを両立するために、既にあるデータを起点として組成探索を行う機械学習手法「ベイズ最適化」を活用。研究員の知見も効果的に取り入れて、ハミガキの使用感と機能面の両方を叶える組成を少ない実験回数で絞り込む方法を確立しました。
ハミガキの固さや滑らかさの指標となる「粘度(Pa・s)」と「弾性率(Pa)」の組成探索では、わずか16回で目標をクリアする組成を絞り込むことに成功。サンプルでは100回以上作製することも珍しくないため、生産性向上・開発期間短縮に大きく貢献する成果を挙げているとわかります。追加工程を含めても、想定していた開発期間の約半分で組成開発を実現したとのこと。今後はハミガキ以外の製品においても、マテリアルズ・インフォマティクスを用いた実験計画手法を応用していく予定です。
ライオンはこの革新的な技術を伝えるべく、2023年6月6日から同年6月9日にかけて開催された「第37回人工知能学会全国大会」に参加。ライオン研究開発本部の稲垣英輔氏、キムリュンヒ氏、藤原優一氏の3名が登壇し、「ベイズ最適化手法を用いた歯磨剤開発の高速化」と題して研究結果を発表しています。
現在製品開発が難航している企業も、マテリアルズ・インフォマティクスを活用すれば、組成開発の効率が大幅に上がり、より短い開発期間で製品をリリースできるでしょう。
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