マテリアルズインフォマティクス ベンダー特集
マテリアルズインフォマティクス ベンダー特集 » マテリアルズ・インフォマティクス(MI)の成功例 » 富士フイルムのマテリアルズインフォマティクス(MI)の成功事例

富士フイルムのマテリアルズインフォマティクス(MI)の成功事例

目次

近年、材料開発の短期化と精度向上は製造業の競争力を左右する重要なテーマとなっています。富士フイルムは長年にわたり培った化学・材料技術と、デジタル技術を融合することで、新たな価値創出を図ってきました。とりわけマテリアルズインフォマティクス(MI)の導入は、従来の経験則に依存した開発プロセスを変革し、多様な事業領域でのDX推進を支える柱となっています。

このページでは、富士フイルムが直面していた開発上の課題から、マテリアルズインフォマティクス(MI)導入によって得られた具体的成果、そして未来に向けた展望をわかりやすくご紹介します。

富士フイルムが抱えていた課題

従来、半導体材料などの新規材料開発は、研究者が候補化合物の構造を予想し、実際に合成・評価を繰り返す方法が主流でした。この手法では、有望な候補を絞り込むまでに年単位の時間を要し、実験コストや試薬の浪費、環境負荷の増大を招いていました。また、製品ライフサイクル全体で蓄積されるデータは部門ごとに断片化されがちで、横断的な分析や再利用が難しい状況でした。

さらに、サプライチェーン管理においては電話やメールによるやり取りが中心で、在庫や納期のリアルタイム把握が不十分だったため、部品調達の効率化にも限界がありました。こうした状況下で、材料開発速度の遅さとデータ信頼性の不足が、事業の成長を阻む大きなボトルネックとなっていました。

マテリアルズインフォマティクス(MI)導入で出した成果

2016年からMIの基礎研究を重ねてきた富士フイルムは、独自のアルゴリズムを組み込んだ生成AIを活用し、候補化合物の構造提案から実現可能性のスコアリングまでを自動化しました。以前は候補選定にかかっていた数年の期間を、数カ月にまで短縮できるようになり、試作品の合成回数を大幅に減らすことに成功しています。これにより、研究者は創造的な課題設定や新領域への応用検討に集中できるようになり、人手では見落としがちな未知構造の発見にもつながりました。

一方、サプライチェーン管理には2023年に本稼働を始めたデジタルトラストプラットフォーム(DTPF)を導入しました。ブロックチェーン技術によりデータ改ざんを実質的に防ぎつつ、ローコード開発ツールで現場担当者自身がアプリを改善できる仕組みを整備。在庫情報や流通経路をリアルタイムで共有することで、300社・3.2万品目超の部品管理効率が向上し、在庫削減と調達リードタイムの短縮を実現しています。

さらに、健診センター「NURA」では、AI診断機器を導入したことでがん検診や生活習慣病検査を約二時間で提供可能とし、取得データを本人同意のもとで将来の保険選定や治験マッチングに活用する計画を進めています。

このほか、社内向けには「Fujifilm AIChat」を展開し、研究開発現場で文献サマリー抽出やコード生成支援に役立てるなど、生成AIの活用範囲を広げています。

参照元:エクサウィザーズ公式HP https://exawizards.com/column/management-interview/fujifilmhd2024/

今後の展望

富士フイルムは中期経営計画「VISION2030」において、製品・サービスの機能価値を高めるステージIから、他社と連携して社会課題の解決を目指すビジネスエコシステム段階のステージIIIまでを段階的に進めるDXのロードマップを示しています。

デジタルトラストプラットフォーム(DTPF)は、異業種連携を進めるうえでの基盤として位置付けられており、生成AIは非IT部門でも扱いやすいツールとして、業務プロセスの自動化に向けた展開が進められています。

特に、RAG(Retrieval-Augmented Generation)を用いた情報精度の向上や、コールセンター業務における自然言語応答の適用など、顧客接点におけるデジタル変革にも注力しています。

また、同社では専門分野の知識とデジタルスキルを兼ね備えた人材の育成にも注力しており、現場主導での試作や業務改善を可能とする組織体制の整備を進めています。これにより、材料開発の迅速化だけでなく、サプライチェーンやヘルスケア分野など多様な領域において、持続可能な価値創出と社会課題の解決を図るエコシステムの構築が期待されています。

SELECTIONS
専門的な領域に強みを持つ
マテリアルズインフォマティクスの
ベンダー3選

専門領域を持っているMIベンダーを厳選しました。
自社の研究対象に近しい領域を専門としているMIベンダーの方が、
コミュニケーションにズレがなく、知見や実績も豊富な可能性があります。

化学・素材メーカーのアイコン
有機・無機化合物の
新素材・製品開発を行う
化学・素材メーカーの相談先
日立ハイテク
「化学・素材」領域に強い理由

化学・素材分野で数多くの開発を成功に導いた実績があります。

日立グループ全体の強みを活かして材料開発を総合的に支援できることから、早期の市場参入を可能にします。

製薬会社のアイコン
新薬候補の特定、
毒性予測など研究を行う
製薬会社の相談先
富士通
「創薬」領域に強い理由

富士通では、創薬に特化したプラットフォームを用意。特許読解、法規制物質チェックにも一貫して対応可能。

特定の材料開発プロセスではなく、創薬研究プロセス全体のDXが叶う点も魅力です。

エネルギー企業のアイコン
新エネルギー材料の
発見に注力する
エネルギー企業の相談先
伊藤忠テクノソリューションズ
「エネルギー」領域に強い理由

新しいエネルギー材料の特性を正確に予測する「Mat3ra」(旧Exabyte.io)プラットフォームを提供。

新しいバッテリー材料や軽量合金の開発をスピーディーに進められることが可能です。