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ダイセルのマテリアルズインフォマティクス(MI)の成功事例

目次

私たちの身の回りで活用されるプラスチックやゴム、繊維などの高分子材料は、日々の暮らしや産業の基盤を支えています。しかし、環境負荷や資源制約といった課題に直面する現代において、新しい物性を備えた材料を効率的に見つける手法が求められています。

そこで注目を集めているのが、データサイエンスや人工知能を材料開発に応用する「マテリアルズインフォマティクス(MI)」です。この記事では、Daicel(ダイセル)がMIを取り入れるまでの背景と成果、そして今後の展望をご紹介します。

ダイセルが抱えていた課題

従来の高分子材料探索では、候補構造の生成から合成可能性の検証、実験デザインの策定まで多くの工程が必要でした。仮想ライブラリを機械学習で評価しても、現実に合成できるかどうかは専門家の経験や勘に頼る部分が大きく、試行錯誤を繰り返すうちに時間とコストがかさんでしまいます。

ダイセルにおいても、高機能ポリマーの創製を急ぎたい一方で、実験段階での失敗リスクや試薬の手配、反応条件の最適化に伴う負担がネックとなり、新材料探索のスピードを制限する要因となっていました。

マテリアルズインフォマティクス(MI)導入で出した成果

こうした状況を打開すべく、ダイセルは統計数理研究所と連携し、SMiPolyという仮想高分子生成モデルを開発しました。SMiPolyは重合反応のルールを二十二種類網羅し、市販モノマーを入力すると計算機内で合成プロセスを再現します。その結果、約千種類の原料から十七万件の仮想高分子ライブラリを自動生成できるようになりました。

これにより、物性予測モデルの評価対象が合成可能な候補に絞られ、実験設計にかかる手間を大幅に減らすことに成功しています。また、得られた仮想物質群の多様性と質は、従来の手法では見過ごされがちな構造にも光を当て、新たな性能発見につながる可能性を広げました。

参照元:ダイセル公式HP https://www.daicel.com/news/assets/pdf/20230829.pdf

今後の展望

SMiPolyの成果を土台に、ダイセルを含む産学連携コンソーシアムではRadonPyという物性自動計算システムを用いて、仮想高分子の物性データベース構築を進めています。これが整備されれば、合成可能性だけでなく用途に応じた性能予測から反応条件の最適化提案まで、一連のワークフローをシームレスに実行できる環境が整う見込みです。

さらに、得られたデータを解析することで、高分子設計の化学的特徴や性能限界を深く理解し、必要に応じて新たな重合反応や合成技術を創出する道が開けるでしょう。こうした取り組みは、環境やエネルギー問題に適した革新材料の実現に向けた一歩となり、持続可能な社会基盤を支える礎になると期待されます。

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