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ホンダのマテリアルズインフォマティクス(MI)の成功事例

目次

材料に関する開発業務は、自動車の軽量化や新しい製造技術の導入にともない、ますます複雑さを増しています。特に、さまざまな材料を使い分けるマルチマテリアル構造の普及や、設計段階でのシミュレーション活用の広がりは、材料情報の管理と活用における新たな課題を生んでいました。こうした背景の中、ホンダは「マテリアルズインフォマティクス(MI)」と呼ばれる技術に着目。

材料データと機械学習を組み合わせることで、材料開発のスピードと精度を高める取り組みを進めています。本記事では、ホンダがどのような課題を抱えていたのか、マテリアルズインフォマティクス(MI)を導入したことでどのような成果が得られたのか、そして今後どのような展望を描いているのかを分かりやすく解説していきます。

ホンダが抱えていた課題

従来の材料開発は実験と経験則に依存し、樹脂やマグネシウムなど多様な素材を扱うたびに、新たな試行錯誤が必要でした。複数の材料を組み合わせるマルチマテリアルボディーの設計や3Dプリント技術の導入は開発範囲を広げたものの、個別の実験データが現場ごとに分散し、必要な情報を探し出すだけでも時間がかかる状況になっていたのです。

部門ごとに異なる形式で記録された試験条件や評価項目は統一されておらず、データの出所や前提条件が明らかでないまま解析を進めると誤った判断を招くおそれがありました。さらに、モデルベース開発(MBD)の普及に伴いCAE解析に要求される材料モデルは高度化し、詳細なひずみ–応力曲線や温度特性など、多岐にわたるデータを手作業で扱うことが開発工数の増大につながっていたのです。開発速度を維持しつつ品質を担保するためには、材料情報の一元管理と自動的なデータ連携が欠かせない状況でした。

マテリアルズインフォマティクス(MI)導入で出した成果

ホンダはまず、アンシスの材料データベース「ANSYS GRANTA MI」を採用し、各部門に分散していたデータを集約。金属から有機材料、機能材料、化成材料に至るまで、さまざまな記録を統一フォーマットで登録すると同時に、ユーザーごとにアクセス権限を設定し、必要な情報だけを表示できる仕組みを構築しました。

入力テンプレートには補助機能を組み込み、表記ゆれの抑制や数値の妥当性チェックを実現。これによって、データの品質を担保しつつ、管理コストを抑えることが可能になりました。さらに、過去の実験データを機械学習モデルに供給し、少量の試験結果から要求特性を満たす材料配合を迅速に候補抽出する実証を実施。

従来の試行回数は半減し、開発期間はおよそ二割縮小したとされています。これらの成果は、データサイエンスを活用した材料設計の有効性を示すとともに、社内でのMIへの理解を深めるきっかけとなりました。

参照元:MONOist公式HP https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2009/14/news022_2.html

今後の展望

材料データベースとMIの基盤が整った段階で、ホンダはさらなる活用範囲の拡大を目指しています。今後は、異なる開発フェーズの情報を連携させ、設計段階から製造・品質保証までデータドリブンに進めることを想定。

加えて、社外パートナーとのデータ共有プラットフォームを構築し、サプライヤーが保有する試験結果やシミュレーション情報をリアルタイムで取り込みやすい環境を整備すると見込まれます。将来的には、AIを活用した予測モデルを強化し、材料選定だけでなく、製造プロセスの最適化やコスト低減案の自動提示までを視野に入れることで、持続的な価値創造につなげようとしています。

こうした取り組みは、初心者にも現場にも理解しやすいデータ基盤と解析環境を用意することで、材料開発の裾野を広げる原動力となるでしょう。

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