1958年に創業し、合成潤滑油やホットメルト接着剤をはじめとする独自技術を活かした多様な製品を生み出している株式会社MORESCO。同社では研究開発部門におけるDXの一環として、2022年にMIの検討を開始。その背景として、案件の増加やコロナ禍における在宅勤務が推奨されたことで実験数の確保が困難となり、製品開発の効率化が求められたという点が挙げられます。効率化を検討する中では、以下の点などが課題として挙げられました。
このような背景から、同社ではデータ駆動型のアプローチを取り入れ、業務プロセスを革新する「研究開発DX」への取り組みを開始。実験データの管理に着手する中で、MIの活用が始まりました。
MI活用の取り組みとして、まずは勉強会が開催されました。初めは開発者自身がデータサイエンスを身につけることを目的として専門性の高い内容の勉強会を行ったところ、逆にMI活用のハードルを上げてしまう結果に。そのためSaaSを活用する方針に転換し、勉強会の内容もアウトプットを意識したものに変更し、ベイズ最適化の勉強会を開催したところ、とある部署のメンバーから「やってみたい」と手が挙がりました。
そこで、あらかじめ他社のツールを使用して解析と提案配合の作成を行った上で、開発者による試作を行うという流れで連携したところ、結果として得られた提案配合において特異的な性能を見出すことができ、ベイズ最適化の優位性を確認できました。
機械学習を研究開発に取り入れる中では、「提案配合を試作するかどうか」がハードルのひとつとなっていましたが、開発者の興味と好奇心により実際に試作するというハードルを乗り越えられたからこそ、特異的な性能を見出すといった結果につながったと考えられています。
ただし解析者と開発者を分けたことで、データの受け渡しや解析結果の説明など、さまざまなやりとりが発生してしまいました。そのため、ベイズ最適化を日常業務に落とし込んだとしても本当の意味で効率化は望めない点に加えて、開発者がモチベーションを保ったまま主体的に実験を進めていくには、本人が解析を行うことが重要という結論に達しています。
その後、MIツールを比較検討し、「研究者自身がMI解析を行えるように」という意図から、開発者に合わせた仕様が採用されているmiHub®︎を導入しています。たとえ開発者がデータサイエンスに詳しくなくても、開発者に寄り添ったmiHub®︎であれば、示される道筋や実験条件に沿って進められるため、迷わずに活用できると考えた点が導入理由の一つとなっています。
同社では、miHub®︎の導入より前に別の解析ツールを導入しています。そのため、データサイエンティストの場合は専門的なスキルを活かして先に導入していた別の解析ツールを活用し、開発者は直感的に操作できるmiHub®︎を用いて実験計画を進めるといったように、使い分けが行われています。このように、miHub®︎は開発者にとってデータサイエンスの知識に依存せず、効率的に実験計画を立てられるツールであることから、それぞれの強みを活かし協力しながら取り組める体制が構築できています。
miHub®︎の導入によって、Pythonを用いて自分でアウトプットデータを成形するといった手作業が不要になりました。さらに、miHub®︎により示されるプロセスに沿って進めることで、開発者自身が機械学習に基づく実験データを出せるようになっています。そのため、実験や日々の業務を行いながらも負担なく活用できるソフトであると評価されています。さらに、開発者自身で解析が行えるようになり、解析者との連携やコミュニケーションの手間を省けています。
このような効率化に加えて、実験の質向上の効果も得られています。導入後は、自身の解析を通じて得られた配合について、「この材料が効いている」「この物性が効いている」と確認し、次の施策につなげる流れが生まれたり、miHub®︎を活用することで見出した配合から良い結果が生まれるなど、新たな発見も得られています。MIの経験が浅い人や初めて開発に入る人でも、機械学習を実験に活かせるようになりました。
今後は、miHub®︎を用いて新たな実験条件を効率的に取得することを根付かせたいと考えています。その中では、「開発者×MI」の掛け算で初めて価値が創造されるため、開発者自身が新たな材料の探索に尽力する中で、自身のレベルアップを継続することを重視しています。
現在は、開発者が主体的に機械学習を活用する文化を育てる一環として、各開発部からmiHub®︎ユーザーを選出し、実験計画プロセスにMIを組み込む活動をしています。このように、全社一丸となり、研究開発型企業としてのあるべき姿を追求することを目指しています。
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特定の材料開発プロセスではなく、創薬研究プロセス全体のDXが叶う点も魅力です。
新しいエネルギー材料の特性を正確に予測する「Mat3ra」(旧Exabyte.io)プラットフォームを提供。
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