マテリアルズ・インフォマティクス(MI)は、材料研究におけるデータ活用を効率化し、高分子材料の開発において重要な役割を果たしています。統計数理研究所などが手掛けるこの分野では、高分子物性の自動計算技術とスーパーコンピュータ「富岳」を活用し、膨大なデータを効率的に解析。新たな材料の発見や製造プロセスの最適化が進められています。
高分子材料は、日常の生活や工業製品において幅広く利用されています。成形加工のしやすさ、軽量性、そして強度など、様々な分野で求められる特性を兼ね備えているためです。プラスチックをはじめとする高分子材料は、製造業や自動車、建設、電子機器分野でますます重要な存在となっています。
高分子材料の大きな特長の一つは、成形加工のしやすさです。
金属やガラスのように高温でしか加工できない素材とは異なり、比較的低い温度で加工できるため、製造コストやエネルギー効率の面で非常に優れています。
熱可塑性樹脂は熱を加えることで簡単に溶解し、成形後に冷却して固化するため、複雑な形状や大規模な量産が可能です。さらに、射出成形、押出成形、真空成形など、さまざまな加工方法にも対応できる柔軟性があるため、製品設計の自由度が高くなります。こうした特性により、家電製品や自動車部品、包装材など、あらゆる分野での利用が進んでいます。
高分子材料のもう一つの大きな利点は、その軽量性です。高分子材料は金属やガラスと比較して、非常に軽いのが特徴です。ポリプロピレンやポリエチレンのような素材は、その比重が1以下であり、これは水よりも軽いことを意味します。軽量であることは、輸送コストの削減や、取り扱いのしやすさに直結します。
また、軽量でありながらも必要な強度を持たせることが可能です。そのため、航空機や自動車など、燃費性能を向上させることが求められる分野では特に重宝されています。
さらに、発泡技術を利用することで、より軽量な材料の製造も可能となり、さまざまな構造物や断熱材、パッケージに応用されています。
高分子材料は、機械材料としての強さを持たせることも可能です。
一般的なプラスチックは、単体では金属に比べて強度が劣るものの、強化材を加えることでその弱点を克服できます。ガラス繊維やカーボンファイバーを添加すると、耐衝撃性や耐久性が飛躍的に向上します。このように強化された高分子材料は、金属の代替材として利用され、軽量でありながらも高い強度を保てるのです。
この特性は、自動車部品や航空宇宙分野で特に重要であり、製品の軽量化と耐久性のバランスが求められる場面で大いに役立っています。さらに、適切な配合を施すことで、耐熱性や耐薬品性も強化可能です。過酷な使用環境においても安定した性能を発揮します。
これらの理由から、機械部品や電子部品の製造においても高分子材料が活用されています。
MIは、データ科学と材料科学を融合させ、新素材開発を効率化する技術です。高分子材料における物性データの収集と解析は、その可能性を大きく広げるための重要な要素です。
従来、MIに資する高分子物性データベースは存在しませんでした。
これは、データの複雑さや、物性計算に必要な情報量の膨大さが原因とされています。そこで、日本国内の複数の大学や企業からなるコンソーシアムが結成され、高分子物性データベースの構築が進められています。
特に、統計数理研究所のものづくりデータ科学研究センターの研究者は、高分子物性の自動計算手法を開発し、このデータ基盤の構築に大きく寄与しています。この手法は、日本が誇るフラグシップスーパーコンピュータ「富岳」との連携によって実現されています。「富岳」の超高速計算能力を駆使し、膨大な量の高分子物性データを生成することで、世界最大規模のデータベースが誕生する予定です。このデータベースは、新素材開発や製造プロセスの改善に貢献し、企業や研究機関にとって貴重な情報源となるでしょう。
データの自動計算によって、これまで時間がかかっていた物性の予測や解析が劇的に短縮され、材料研究のスピードアップが期待されています。統計数理研究所が主導するこの取り組みは、材料科学における次世代のデータ活用の方向性を示しており、国内外から注目を集めています。
参照元:統計数理研究所 http://spacier.ism.ac.jp/research/データ駆動型高分子材料研究を変革するデータ基/
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