京都大学材料工学分野で注目されるマテリアルズインフォマティクスは、AIと物性科学を融合する手法です。新材料探索を加速し、効率的な開発を目指しています。従来の研究では既知物質の改良が中心で、新規物質発見の難しさが残っていました。
しかし情報科学と量子力学的計算を組み合わせることで、画期的な成果が生まれています。本成果は2015年11月にPhysical Review Letters誌に掲載され、学術的にも高い評価を得ました。世界各国が巨額の研究予算を投じる中、日本でもNIMSに情報統合型物質研究拠点が立ち上がり、注目が高まっています。本記事は、課題背景から具体的な成果、今後の展望までを解説します。
京都大学の研究チームは、輸送機器や半導体などさまざまな用途で発生する熱を効率的に制御する必要性に直面していました。従来の低熱伝導材料開発は既存物質の元素置換や合金化が中心で、新規物質の発見には限界がありました。
また、実験や詳細計算に多大な時間とコストがかかり、研究範囲を広げることが困難でした。さらに高精度計算には高性能コンピュータ資源が必要で、利用競争の激化も課題となっていました。研究者が属人的な知見に頼る部分も多く、データ駆動型手法の必要性が一段と高まっていました。こうした制約が多様な応用に対応する物質探索を妨げていたのです。
マテリアルズインフォマティクス手法では、量子力学に基づく第一原理計算で百種類近くの物質の熱伝導度を算出しました。その高精度データを機械学習モデルの学習資料とし、ICSDに登録される約五万五千物質をバーチャル・スクリーニングでランキングしました。ランキング上位には既知材料より一桁低い熱伝導度を示す候補が多数含まれ、高精度再計算で特性を実証しています。
実際に発見された物質は従来材料より熱伝導度が一桁以上低く、熱電変換効率の向上も期待できます。京大が開発したPhonopyプログラムは世界標準となっており、本研究でも計算プラットフォームの中核を担いました。このアプローチにより従来数年かかる探索期間を大幅に短縮した点も大きな特長です。この成果は熱遮蔽や熱電変換材料の選択肢を大幅に広げました。
参照元:京都大学公式HP https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/embed/jaresearchresearch_results2015documents151113_101.pdf
参照元:ニュースイッチ https://newswitch.jp/p/30405
今後は、第一原理計算と機械学習の連携をさらに深める取り組みが進むでしょう。京都大学のPhonopyプログラムを活用し、計算精度を高める見込みです。さらに新たな記述子を開発して探索対象を拡大すると考えられます。また、ロボット協働実験を組み合わせることで合成プロセスも効率化し、材料の実用化を加速する動きが期待されます。国際共同研究の枠組みも強化され、エネルギーや環境分野での応用拡大が見込まれます。
さらに人材育成の観点から、データサイエンティストと材料研究者をつなぐ教育プログラムの整備も重要になります。産業界への技術移転やスタートアップ支援も今後の鍵を握るでしょう。
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