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パナソニックのマテリアルズインフォマティクス(MI)の成功事例

目次

ものづくりの世界では、新しい材料の発見に長い時間と膨大な手間がかかってきました。パナソニックも例外ではなく、これまで経験や勘に頼る試行錯誤を重ねることでしか革新的な電池材料を生み出せませんでした。しかし近年、データとAIを活用して材料開発を効率化する「マテリアルズインフォマティクス(MI)」が注目を集めています。

パナソニックはこの技術を取り入れることで、研究開発の常識を変えつつあります。このページでは、同社が抱えていた課題からMI導入による具体的成果、そしてこれからの展望までを、専門家の視点から初心者にもわかりやすく解説します。

パナソニックが抱えていた課題

パナソニックは総合電機メーカーとして、ニッケル水素やリチウムイオン電池など高性能な二次電池を世に送り出してきました。しかしその裏側には、材料研究に要する膨大な時間とコストという課題がありました。一つの新材料を見つけ出すには、多くの組成検討を重ね、場合によっては数年から十年単位の歳月を要することもあります。

さらに、社内には長年の実験データが散在し、手書きのノートに残された情報はデジタル化されておらず、検索や分析に適した形で蓄積されていませんでした。材料技術者とIT技術者の連携も十分とは言えず、データを活かし切れないもどかしさがありました。こうした状況から、より迅速かつ確実に材料探索を進める新たな手法が強く求められていました。

マテリアルズインフォマティクス(MI)導入で出した成果

パナソニックではまず、100年にわたって蓄積された実験データや計算結果をデジタル化し、一元管理できるデータベースの構築に着手しました。手書きの実験ノートをスキャンしてテーブル化し、学術論文やオープンデータと組み合わせることで、材料の組成と特性を結びつける統合環境を整備したのです。その上で、材料技術者とAI技術者が同じテーブルを囲み、予測モデルの開発と検証を並行して行う仕組みを構築しました。

この結果、従来なら数年かかっていた電解質の候補絞り込みを、数ヵ月に短縮できるようになりました。実際に新たな熱電材料や高容量電池の電解質候補が見つかり、実験環境での評価サイクルを高速に回せるようになったことで、開発期間の短縮に着実に結びついています。

パナソニックは、MIによって不足している実験データの領域を特定し、それを補うための効率的な実験体制の構築に取り組んでいます。AIが提案した条件を活用し、実験サイクルの高速化を目指しています。

これにより、局所最適と大域最適のバランスをとりながら効率的に試験を進めることが可能となりました。こうした取り組みは、全固体電池の実用化に向けた開発を加速する土台となっています。

参照元:MONOist公式HP https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/1903/29/news063.html

今後の展望

これからのパナソニック材料研究は、バーチャルとリアルをシームレスに連携させるフェーズへと移行すると考えられます。原子レベルからシステム全体に至るまで、シミュレーション技術を活用することで、実機試験を最小限に抑えながら開発を進められる未来が見えてきました。加えて、2020年までに社内のAI人材を千名規模に増やす計画もあり、より多くの技術者がMIに参画することで多様な視点からのモデル改善が期待されます。

また、材料開発の成果を事業部門へ迅速にフィードバックし、製品化から製造までのリードタイムを一気に短縮する仕組みづくりも鍵となるでしょう。研究段階で得られた知見をメーカーとしての強みであるデバイス開発へ直結させ、持続可能なエネルギー社会の実現に貢献することが、今後の大きな使命となりそうです。

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