マテリアルズインフォマティクス ベンダー特集
マテリアルズインフォマティクス ベンダー特集 » マテリアルズ・インフォマティクス(MI)の成功例 » 日本製鉄のマテリアルズインフォマティクス(MI)の成功事例

日本製鉄のマテリアルズインフォマティクス(MI)の成功事例

目次

日本製鉄は、従来の材料開発プロセスが抱える時間的・コスト的な制約を打破するため、マテリアルズインフォマティクス(MI)を積極的に取り入れています。MIとは、材料に関する実験データや計算科学の知見をデータベース化し、機械学習や統計手法で解析することで、開発候補を効率的に絞り込む技術です。

このページでは、日本製鉄がMIを活用して「高周波対応フレキシブル誘電材料」の研究開発に挑んだ事例を紹介し、従来手法との違い、得られた成果、そして今後の展望について分かりやすく解説します。

日本製鉄が抱えていた課題

従来、高周波対応のフレキシブル誘電材料を設計するには、多数のポリイミド系モノマーを一つずつ合成・評価し、誘電率や損失正接(タンジェント)を測定する手法が一般的でした。しかし、このアプローチでは以下のような問題がありました。

まず、試作に必要な原料コストや合成工数が膨大である点です。数十、数百種類に及ぶ候補化合物を一つ一つ試すには多大なリソースを要し、開発サイクルが長期化しがちでした。

次に、得られたデータをまとめて解析し、次の候補分子へ反映するのに時間を要したことです。実験結果の傾向を直感的に把握することが難しく、新たな材料設計の指針を得るまでに試行錯誤が繰り返されていました。

さらに、ギガヘルツ帯域での誘電特性は電子分極や原子分極、配向分極といった複雑な寄与の合計で決まるため、実験だけでは「なぜ性能が良いのか」を定量的に説明しにくいという課題もありました。

日本製鉄がマテリアルズインフォマティクス(MI)導入で出した成果

こうした課題を克服するため、日本製鉄はMIを活用した新しい材料開発スキームを構築しました。まず、過去の実験データや第一原理計算の結果を統合し、誘電特性と分子構造の関係性を学習するモデルを構築。次に、そのモデルを用いてポリイミドのモノマー候補を仮想的にスクリーニングし、誘電率と損失正接が低くなる化合物を効率的に絞り込みました。

この手法により、候補化合物の選定にかかる試作数を従来の1/5以下に削減。実際に絞り込んだ数十種類の中から優れた誘電特性を示すサンプルを合成し、測定したところ、予測値と実測値の相関が高く、スキームの有効性が確認されました。加えて、モデルが示した構造–特性の関係から、新たな設計指針も得られ、従来では難しかった高周波帯域での材料最適化を短期間で達成しています。

参照元:日本製鉄公式HP https://www.nipponsteel.com/common/secure/tech/report/pdf/424-32.pdf

今後の展望

日本製鉄では、今回の成果を踏まえ、マテリアルズインフォマティクス(MI)の活用を今後さらに幅広い材料開発分野へ展開していく方針です。具体的には、第一原理計算や分子動力学シミュレーションと機械学習の連携を強化し、電子分極や配向分極の寄与をより精緻に予測できるモデルの構築を目指しています。

また、サンプルの合成から評価までの一連の工程をデジタルツイン化し、実験と計算のフィードバックループをリアルタイムで回す仕組みづくりにも取り組んでいます。これにより、材料開発のサイクル短縮が期待されています。

さらに、高周波対応の誘電材料だけでなく、構造材や触媒などへの応用も視野に入れており、MI技術の汎用的な展開を進めていく計画です。将来的には、設計から製品化までを一貫してデータに基づいて進める開発基盤の構築を通じて、材料開発の効率化とスピードアップを図るとしています。

SELECTIONS
専門的な領域に強みを持つ
マテリアルズインフォマティクスの
ベンダー3選

専門領域を持っているMIベンダーを厳選しました。
自社の研究対象に近しい領域を専門としているMIベンダーの方が、
コミュニケーションにズレがなく、知見や実績も豊富な可能性があります。

化学・素材メーカーのアイコン
有機・無機化合物の
新素材・製品開発を行う
化学・素材メーカーの相談先
日立ハイテク
「化学・素材」領域に強い理由

化学・素材分野で数多くの開発を成功に導いた実績があります。

日立グループ全体の強みを活かして材料開発を総合的に支援できることから、早期の市場参入を可能にします。

製薬会社のアイコン
新薬候補の特定、
毒性予測など研究を行う
製薬会社の相談先
富士通
「創薬」領域に強い理由

富士通では、創薬に特化したプラットフォームを用意。特許読解、法規制物質チェックにも一貫して対応可能。

特定の材料開発プロセスではなく、創薬研究プロセス全体のDXが叶う点も魅力です。

エネルギー企業のアイコン
新エネルギー材料の
発見に注力する
エネルギー企業の相談先
伊藤忠テクノソリューションズ
「エネルギー」領域に強い理由

新しいエネルギー材料の特性を正確に予測する「Mat3ra」(旧Exabyte.io)プラットフォームを提供。

新しいバッテリー材料や軽量合金の開発をスピーディーに進められることが可能です。