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村田製作所のマテリアルズインフォマティクス(MI)の成功事例

目次

村田製作所は、チップ積層コンデンサやショックセンサなどで高い世界シェアを誇る電子部品メーカーです。多彩な製品群と材料研究力を強みに成長を続けてきました。

一方、材料開発の現場では従来、膨大な時間とコストをかけて試行錯誤を繰り返す手法が主流で、効率化が大きな課題となっていました。この課題に対し、同社はマテリアルズインフォマティクス(MI)を導入し、AIを活用した材料探索へと舵を切ります。

この記事では、村田製作所におけるMI活用の背景と成果、そして今後の展望について解説します。

村田製作所が抱えていた課題

従来の材料開発では、数百から千を超える組み合わせを反復的に評価するため、試験回数やコストが膨張し、エンジニアの負担が大きくなっていました。データ量を減らすと予測精度が落ちて最適候補を見逃しやすく、絞り込みにも限界があります。

さらに社内には機械学習や数理最適化の深い知識を持つ人材が少なく、プログラミング初心者はデータの前処理やアルゴリズム実装で立ち止まるケースが目立ちました。

加えて、実験データのフォーマットが統一されておらず、品質のばらつきや管理コストも課題でした。新型コロナウイルスの影響で学習はオンライン中心となり、理論学習と実践スキルを短期間で結びつける仕組みが求められていました。

マテリアルズインフォマティクス(MI)導入で出した成果

共通基盤技術センターの内田氏は社内プログラムで得た基礎知識をベースに、NTTデータ数理システムの担当者と個別にやり取りしながらベイズ最適化の理論から実践までを習得しました。解析テーマには身近なメイクの色組み合わせを選び、12色のチークと38色のリップから好みを予測するテスト解析を実施。

限られたデータでも好みの度合いが最大となる組み合わせを効率よく絞り込む手法を体験し、参加者の推定精度は7割超にまで高まりました。加えて、GUI操作だけでベイズ最適化を実行できるVAP上のスクリプトを構築したことで、非エンジニアでも解析を実施可能に。

月次の勉強会で解析ノウハウを共有し、部門間で意見交換を重ねる中から新たな応用アイデアが生まれ、実際の材料開発案件でも試験回数を大幅に削減しつつ性能予測を行うサイクルを約1カ月で回せるようになりました。

参照元:NTTデータ数理システム公式HP https://www.msiism.jp/article/murata-bayesian-optimization.html

今後の展望

村田製作所では、MIの活用を材料探索にとどめず、今後は製造プロセスや品質管理の高度化にも広げていく方針を掲げています。具体的には、実験データの一元管理や可視化を支える分析基盤として、2021年にリリースされたAlkanoプラットフォームを社内標準として採用。効率的かつ再現性の高い解析環境の整備を進めています。

また、MIの運用においては知的財産やデータ保護への配慮も重要とされ、社内ガイドラインの整備や教育も並行して進められています。育成プログラムや外部との連携により、社内外での知見の蓄積と共有を図るとともに、実務で使えるAIの導入・適用が着実に広がっている状況です。

同社は今後も、NTTデータ数理システムとの連携を通じて、ベイズ最適化をはじめとするアルゴリズムの高度化や自動化スクリプトの活用など、実践的な解析力を備えたAI活用体制の構築を進めていくと見られます。こうした取り組みにより、より効率的かつ柔軟な材料開発の実現が期待されています。

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