マテリアルズインフォマティクス(MI)は、機械学習などを使って材料の特性を予測し、効率的に新素材を開発する手法です。従来の経験則に頼る方法に比べ、蓄積データを活かして意思決定を支える点が特徴です。本記事では、アキレスがどのようにマテリアルズインフォマティクス(MI)を導入し、材料開発の課題を克服して成果を上げたのかを解説します。
アキレスは高分子材料分野での研究開発において、過去の実験データを最大限に活かしながら効率的に成果へ到達する方法を模索していました。多様な配合や条件の組み合わせを試す必要があり、成功に至る実験を見極めるまでの試行がかさみがちで、時間とコストの観点でボトルネックが存在していたのです。
加えて、従来のやり方では研究者の経験・熟練度への依存が相対的に大きく、再現性や組織的なスピードの確保が課題になり得ました。こうした背景から、蓄積してきた成功・失敗の両方のデータを活用し、事前に有望な実験を絞り込む仕組みづくりが求められていました。
アキレスは山形大学と共同で、物性を予測するガウス過程回帰と、実験の成否を見極めるランダムフォレストという2種類のモデルを中核とする技術を構築しました。これにより、求める特性に近づく処方や条件を事前に見通し、成功確率の高い実験を優先できるようにしています。
実証では、ポリウレタンフォームの実験データを用いて、従来なら1年以上かかっても到達が難しかった物性値に、約3カ月で到達したとされています。ここで重要なのは、成功データだけでなく失敗データも学習に含めることで、予測精度と選別力を底上げしている点です。結果として、無駄な試行を削減しつつ、製品開発のスループット向上につながる“実験計画の質的転換”が起きています。
具体的な社内適用規模の数値は公表されていませんが、モデルの組み合わせで「どれを、なぜ実験するか」の判断が明確になり、開発リードタイム短縮とコスト抑制の両面で効果が示されています。
参照元:アキレス公式HP
https://www.achilles.jp/assets/pdf/news/newsrelease/2025/0421.pdf#view=Fit
参照元:MONOist
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2505/07/news028.html
本技術は社内限定ツールとして高分子系有機材料の開発での活用が進められており、研究リソースの重点配分を通じて開発効率を一段と高める方向です。さらに、工場での加工条件最適化など生産プロセスへの応用も見据えられており、研究から製造までの一貫したデータ活用による意思決定の迅速化が期待されます。
また、過去データと知見を学習する設計により、研究者の経験や熟練度に左右されにくい運用が可能で、属人性の低減と教育コストの縮減が見込まれます。現時点で他材料領域への具体的な展開範囲や数量的な計画は開示されていませんが、少なくとも高分子系有機材料の枠内で社内標準のツールとして展開し、プロセス最適化へと段階的に広げていく方針が示されています。
専門領域を持っているMIベンダーを厳選しました。
自社の研究対象に近しい領域を専門としているMIベンダーの方が、
コミュニケーションにズレがなく、知見や実績も豊富な可能性があります。

化学・素材分野で数多くの開発を成功に導いた実績があります。
日立グループ全体の強みを活かして材料開発を総合的に支援できることから、早期の市場参入を可能にします。

富士通では、創薬に特化したプラットフォームを用意。特許読解、法規制物質チェックにも一貫して対応可能。
特定の材料開発プロセスではなく、創薬研究プロセス全体のDXが叶う点も魅力です。

新しいエネルギー材料の特性を正確に予測する「Mat3ra」(旧Exabyte.io)プラットフォームを提供。
新しいバッテリー材料や軽量合金の開発をスピーディーに進められることが可能です。