マテリアルズインフォマティクス(MI)は、膨大な実験データや知見を統計・機械学習で解析し、狙う特性を持つ材料や配合を効率的に探索する手法です。開発のスピードや精度を高めるこのアプローチは、近年の製造業で注目を集めています。
電子部材メーカーのデクセリアルズは2023年から本格的にMIの導入に取り組み、少人数チームによる立ち上げから全社的な展開へと歩みを進めてきました。本稿では、その課題と成果、今後の展望を整理します。
マテリアルズインフォマティクス(MI)は、材料の実験・測定データを統計や機械学習で解析し、狙う特性に近づく配合や条件を効率的に探索するための手法です。従来の試行錯誤に比べ、仮説の良否を早い段階で見極められる点が特長です。デクセリアルズでは、2023年4月に事業部を起点としたMI推進チームを立ち上げ、製品開発の経験を持つ少数精鋭で着手しました。
初期段階ではMIの実務経験者が社内に乏しく、実験データの蓄積は進んでいても、データを意思決定へ橋渡しする具体的な設計が不足していました。 そこで、現場の開発者が主語になれる環境づくりに重点を置き、プログラミングを前提としない使いやすいツールの選定、身近な題材から小さく試す方針、共通目標の明確化といった実装を並行して進めました。
実務データを用いたデモンストレーションを交え、関係者が手触りを持って運用を理解できる状況をつくることで、着手の心理的ハードルを下げたこともポイントでした。 こうした「自分ごと化」を軸にした立ち上げにより、テーマ募集や部門間連携が徐々に動き出す素地が整いました。
検証はおおむね4カ月のスプリントで設計し、既存製品を題材に“確かめ算”としてMIで同等解に到達できるかを評価しました。 社内の検証結果として、従来は2年を要していた開発テーマで2カ月で同等解にたどり着いた事例が示されています。 さらに、規制対象の材料を使わず、代替材料のみで既存品と同等性能の樹脂配合を導いたケースや、相反する物性のトレードオフ領域で過去最高の性能を更新したケースも紹介されています。
これらを受けて、初年度の検証段階から正式導入へ移行し、翌年度にはコーポレートR&D本部を含む研究開発部門へ横展開が進みました。 運用面では、経験や勘に加えて過去データに基づく予測・探索で実験条件を事前に絞り込む流れが組み込まれ、仮説検証のサイクル短縮や、テーマ推進の自走性向上が確認されています。
参照元:miLab
https://milab.mi-6.co.jp/article/e0012
取り組みは3年目に入り、焦点は“定着化”へ移っています。推進チームの常時伴走に依存せず、各開発チームが自律的にMIを運用できる体制を目指し、実践者やパワーユーザーの育成を計画的に進めています。 同時に、研究開発DXと接続しながら、データベースの整備、測定装置のオンライン化・自動化、研究フローの標準化を進め、学習データの質と量を高める“誰でも取り組める実験室環境”の構築を掲げています。
MIを単独の施策として切り出すのではなく、既存の開発プロセスに織り込むことで、テーマ立ち上げから検証までの各段階でデータ起点の判断を根付かせる方針です。立ち上げの順序設計や使いやすさを優先した運用、現場の参加を促す仕組みといった要点は、導入経験のない読者にとっても参考になる事例といえるでしょう。
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