マテリアルズインフォマティクス(MI)は、膨大な実験データ・材料データにAI(機械学習・ディープラーニングなど)を組み合わせ、情報科学・計算科学の手法で材料開発を効率化する取り組みです。 ただ、現場でつまずきやすいのは「モデルが作れるか」よりも、その前段のデータです。材料開発でMIの利用が進む一方、材料データの不足が大きな壁になりやすいことが指摘されています。
Quemixの取り組みは、この壁を“計算で埋める”発想に寄せつつ、計算そのものをチームで回しやすくするところまで視野に入れている点が特徴です。Quloudは研究チーム全員で気軽に使えるクラウド型材料計算プラットフォームとして位置づけられ、材料計算の入り口で重くなりがちな運用面の負担を下げる狙いがはっきりしています。 この記事では、Quemixが抱えていた課題、MI導入で出した成果、今後の展望を解説します。
1分でわかる要約
マテリアルズインフォマティクス(MI)は、実験データに加えて計算・シミュレーションのデータも使い、材料探索の「当たりを付ける工程」を前倒しします。Quemixの事例は、データ不足や計算の属人化で止まりがちなMIを、計算でデータを作りながら回す発想で前に進めています。
Quantinuum社の量子コンピュータと東京大学物性研究所のスーパーコンピュータを連携させたハイブリッド計算で量子化学計算を実行し、窒化アルミニウム結晶中の欠陥を高精度に扱えることを示しました。
Quloudは、ブラウザから材料計算を扱い、計算データをクラウドで一元管理してチームで共有する前提のプラットフォームです。ハードウェアの維持管理や環境構築の負担を抑えながら、計算結果を蓄積して次の意思決定に戻す流れを作りやすくなります。
専門的な領域を持つMIベンダーを選ぶ重要性
MIは、どの材料領域を扱うかで必要な計算手法やデータの揃え方が変わります。欠陥のように高精度計算が効くテーマでは、計算の精度、計算を回す体制、結果を共有して再利用する仕組みまで含めて「運用できるか」が成果を左右します。
そのため、自社の開発テーマに近い専門領域で実績があり、データ整備から計算・解析の運用まで支援できるMIベンダーを選ぶことが重要です。次のセクションでは、候補を絞り込みたい方向けに「専門的な領域に強いMIベンダー3選」をご紹介します。
Quemixは、量子ビット材料に関わる欠陥の性質を定量的かつ詳細に調べるために、基底状態と励起状態の両方を精緻に理解する必要があると捉えていました。そのため、DFTを用いた従来法よりも高精度な量子化学計算が必要になりました。 一方で、高精度な量子化学計算は、シミュレーション対象の原子数が増えるほど計算時間が指数関数的に増大することが知られています。
高精度を保ったまま、計算をより高速に実行する計算スキームの開発が重要な課題でした。 加えて、計算を日々の研究開発に組み込む運用面の課題も無視できません。材料計算ソフトウェアは専門家向けで難易度が高いものが多く、計算機のハードウェアチューニングや維持・管理も必要になり、材料計算を始めたい研究者にとって大きなハードルになります。 ここが整わないと、計算が「特定の詳しい人の作業」に寄りやすく、チームとして検証の回転が上がりません。MIはデータで意思決定を進めるので、計算が回り、結果が共有され、次の条件出しに戻れる流れまで含めて設計する必要があります。
Quantinuum社製量子コンピュータと東京大学物性研究所のスーパーコンピュータを連携させたハイブリッドコンピューティングで量子化学計算を実行し、窒化アルミニウムの新たな用途の可能性を示すことに成功しました。 計算対象とした窒化アルミニウム結晶中の欠陥は、従来の量子化学計算手法では計算精度に課題がありましたが、量子・スパコンのハイブリッドコンピューティングによって高精度な物性値の算出が可能になりました。その結果、窒化アルミニウムが量子ビット材料の母材としてポテンシャルを有していることが明らかになっています。
研究概要として、窒化アルミニウム中の複合欠陥が新たな量子ビットとして機能する可能性も示されています。 さらに、量子誤り検出符号を用いた論理ビット上で、基底状態計算のためのFTQC向けアルゴリズムを量子コンピュータ実機で実行した試みは、2025年2月末時点の公開論文調査に基づき「世界で初めて」とされています。 MIの実務に引き寄せると、価値が出るのは「高精度なシミュレーションデータが増える」点です。欠陥のように扱いが難しい対象でも物性値が高い解像度で揃えば、学習データや評価指標がぶれにくくなり、候補の絞り込みと検証設計がやりやすくなります。
参照元:QST公式HP(https://www.qst.go.jp/site/press/20250311.html)
参照元:東京大学 大学院理学系研究科・理学部(https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/10712/)
参照元:Quemix公式HP(https://www.quemix.com/post/press-ftqc-asahikasei-utokyo-qst-accepted)
FTQC向けアルゴリズムの実用化が本格化すると、量子化学計算分野やマテリアルズインフォマティクス分野の発展と加速が期待されています。あわせて、窒化アルミニウムの量子ビット材料の母材としての応用開拓が広がることが見込まれています。 一方で、現場の手触りとして効いてくるのは「新しい計算資源がある」こと以上に、「計算とデータの通り道ができている」ことです。
Quloudは、研究チーム全員で気軽に利用できるクラウド型材料計算プラットフォームとして、ブラウザで利用でき、計算データをクラウドで一元管理し、同じグループのメンバー間で共有できる形を前提にしています。 この“日常的に回る仕組み”が先に整うと、材料データの不足というMIの弱点を、シミュレーションデータで補いやすくなります。
MIでよくある課題として挙げられる「データ量の不足」「データの質が不十分」に対しても、作って溜めて使い回す運用が効いてきます。 そして将来的に、Quloudの計算機として量子コンピュータを利用することも視野に入り、量子アルゴリズムの研究開発が推進されています。ここまでを一本の線で捉えると、今後の鍵は「量子かどうか」ではなく、計算で得たデータを継続的に増やし、共有し、意思決定に落とす習慣を早い段階で作れるかどうかです。
専門領域を持っているMIベンダーを厳選しました。
自社の研究対象に近しい領域を専門としているMIベンダーの方が、
コミュニケーションにズレがなく、知見や実績も豊富な可能性があります。

化学・素材分野で数多くの開発を成功に導いた実績があります。
日立グループ全体の強みを活かして材料開発を総合的に支援できることから、早期の市場参入を可能にします。

富士通では、創薬に特化したプラットフォームを用意。特許読解、法規制物質チェックにも一貫して対応可能。
特定の材料開発プロセスではなく、創薬研究プロセス全体のDXが叶う点も魅力です。

新しいエネルギー材料の特性を正確に予測する「Mat3ra」(旧Exabyte.io)プラットフォームを提供。
新しいバッテリー材料や軽量合金の開発をスピーディーに進められることが可能です。