マテリアルズインフォマティクス ベンダー特集

マテリアルズインフォマティクス(MI)の効果とは?

目次

マテリアルズインフォマティクス(MI)を検討するとき、多くの方が最初に気になるのは「結局、自社の開発で何が変わるのか」という点ではないでしょうか。言葉の説明だけでは導入後の姿は見えにくく、ベンダー比較を先に進めても判断しづらい場面があります。実際に見ておきたいのは、候補探索がどれだけ進めやすくなるのか、試作や実験の回数をどこまで絞りやすくなるのか、開発の進み方がどう変わるのかという実務面の変化です。

マテリアルズインフォマティクス(MI)は、材料開発をすべて自動化するものではありません。実験、シミュレーション、過去の評価データなどを活用しながら、次に試すべき候補や条件を決めやすくし、開発の迷いを減らしていく考え方です。大切なのは、技術そのものの新しさを追うことではなく、自社のどの工程で効果が出やすいかを整理したうえで、近い成功事例を確かめ、相談先の比較に進むことです。

この記事では、マテリアルズインフォマティクス(MI)で起こりやすい変化を、工程別と判断軸別に整理します。あわせて、効果が出やすいケースと出にくいケース、成功事例の見方、相談先を選ぶときに確認したい点までまとめました。読み終えるころには、自社がまずどこを見極めるべきかが整理しやすくなります。

マテリアルズインフォマティクス(MI)の効果とは

マテリアルズインフォマティクス(MI)の効果は、一言でいえば「試す前の判断を整えやすくなること」です。材料開発では、候補の洗い出し、条件設定、試作、評価、次の仮説づくりが何度も続きます。そのたびに経験や勘だけで進めると、良い候補にたどり着くまでの遠回りが増えがちです。マテリアルズインフォマティクス(MI)は、過去データや実験結果をもとに、その遠回りを減らしやすくします。

開発現場で見ておきたいのは、予測の見た目よりも、意思決定が前に進むかどうかです。候補を絞りやすくなる、試す順番を決めやすくなる、若手でも判断の手がかりを持ちやすくなる。この変化が積み重なることで、開発全体の進み方が変わっていきます。

候補探索の効率化

材料開発では、原料、組成、添加剤、温度、時間など、検討条件が増えるほど探索の難易度が上がります。候補が多いテーマほど、何から試すかを決めるだけで時間を使ってしまいます。マテリアルズインフォマティクス(MI)の効果が見えやすいのは、こうした探索の初期段階です。候補を一気に当て切るのではなく、先に見るべき条件や組み合わせを絞り込みやすくなります。

この効率化の価値は、候補数が多いテーマほど大きくなります。すべてを同じ重みで試すのではなく、有望な領域から先に見にいけるようになるためです。開発の初動で方向性を外しにくくなるだけでも、後工程の手戻りは抑えやすくなります。

試作回数・実験回数の削減

マテリアルズインフォマティクス(MI)は、実験そのものを不要にする手法ではありません。ただ、試す前の絞り込みが進むと、外れ候補に使う試作や試験を減らしやすくなります。とくに、試作1回あたりの負荷が大きいテーマでは、この差が開発全体の重さに直結します。

重要なのは、回数を減らすこと自体より、必要な試作に集中しやすくなることです。従来なら何通りも試していた条件を、優先順位をつけながら進められるようになると、試作や評価の進め方が変わります。結果として、限られた工数や予算の中でも、手応えのあるテーマに時間を使いやすくなります。

開発スピードの向上

開発スピードが上がるといっても、単に計算処理が速くなるという意味ではありません。開発サイクル全体が前に進みやすくなる、という変化です。候補選定から試作、評価、次の仮説づくりまでの往復が軽くなり、探索の初期で方向性を定めやすくなると、見込みの薄い条件に時間をかけにくくなります。

また、判断材料が整理されると、研究部門、評価部門、生産側の会話も進めやすくなります。どの候補を、なぜ先に試すのかが共有しやすくなるからです。現場で「効果が出た」と感じやすいのは、こうした開発の進み方そのものが変わったときです。

若手育成・属人化解消

材料開発では、熟練者の経験が大きな強みになります。その一方で、判断の根拠が個人の中に閉じたままだと、引き継ぎや横展開が難しくなります。マテリアルズインフォマティクス(MI)は、ベテランの判断をそのまま置き換えるものではありませんが、どのデータを見て、どの条件を重視しているかを整理しやすくします

その結果、若手が判断の入口をつかみやすくなります。何を見て、どこを比べて、どう絞り込むのかが見えやすくなるからです。属人化の解消は、経験を消すことではなく、判断の流れを共有しやすくすることです。この点でも、マテリアルズインフォマティクス(MI)は導入価値を持ちます。

マテリアルズインフォマティクス(MI)で効果が出やすいケース

実験条件の組み合わせが多いテーマ

効果が出やすいのは、検討条件の組み合わせが多いテーマです。原料、配合比、温度、時間、工程条件などを複数動かす必要がある場合、従来の進め方では試行錯誤が長引きやすくなります。こうしたテーマでは、どこから先に見るべきかを決めやすくなるだけでも意味があります。

条件が増えるほど、全部を同じ深さで試すのは難しくなります。だからこそ、探索の順番を整えやすいテーマでは、マテリアルズインフォマティクス(MI)の効果が見えやすくなります。候補探索の初動を軽くできるテーマほど、導入の手応えも得やすくなります。

過去データがある程度蓄積しているテーマ

過去の実験結果や評価履歴がある程度残っているテーマも、効果を出しやすい条件に入ります。データの量が多いことだけでなく、どの条件でどの結果が出たかを追えることが重要です。こうした履歴があると、次の候補を考える土台を作りやすくなります。

逆に、完全にゼロから予測させるより、既存の知見を整理して活かすほうが初期の成果は出やすくなります。まずは過去テーマの蓄積を使い、探索や判断の精度を上げる。その積み重ねが、次の活用範囲を広げていきます。

探索の優先順位づけが重要なテーマ

何から試すかが成果を左右するテーマにも向いています。たとえば、顧客要求への対応が急ぎの案件や、短期間で有望候補を示す必要があるテーマでは、候補の並べ替え自体が価値になります。

開発現場では、最初から完璧な答えを出すことより、次の一手を外しにくくすることのほうが大事な場面も少なくありません。探索の優先順位づけが重要なテーマでは、その差がそのまま進行速度の差になります。

熟練者依存を減らしたいテーマ

限られたベテランに判断が集中している場合は、若手育成や複数拠点での運用に課題が出やすくなります。担当者によって候補の選び方や評価の見方が大きく変わるテーマも、相性がよいケースです。マテリアルズインフォマティクス(MI)を使うと、判断の材料や着眼点を整理しやすくなります。

ベテランの勘を否定する必要はありません。むしろ、その勘の背景をデータと一緒に残し、ほかのメンバーでもたどりやすくすることに意味があります。属人化を減らしたいテーマでは、この視点が導入価値につながります。

マテリアルズインフォマティクス(MI)の効果が出にくいケース

データが少なすぎる

データが極端に少ない状態では、効果は出しにくくなります。とくに、件数が少ないだけでなく、測定条件や記録の仕方がばらばらだと、比較の土台を作るところから手間がかかります。マテリアルズインフォマティクス(MI)の活用でよく挙がる課題としても、データ量の不足とデータ品質のばらつきは外せません。

この場合は、いきなり高度な予測を求めるより、どのデータをどの形で残すかをそろえるほうが先です。導入しても成果が出ないというより、まだ効果を出せる状態に整っていないと考えたほうが実態に近いです。

評価指標が曖昧

評価指標が曖昧なテーマも進めにくくなります。強度、加工性、耐久性、コストなど、見たい項目が複数あるのに優先順位が決まっていないと、候補を絞り込む基準が定まりません。どの性能を優先するのかが曖昧なままだと、分析結果が出ても現場で使いどころを決めにくくなります。

導入前に整理しておきたいのは、「何が改善したら成功なのか」です。ここが決まっていないと、結果の良し悪しも判断しづらくなります。効果を見たいなら、先に評価軸をそろえる必要があります。

PoC止まりで終わる

導入を考えるときは、PoCで一定の結果が出るかどうかだけで判断しないほうが安全です。小さな検証ではうまく見えても、その後の実験計画やテーマ運用に組み込めなければ、現場の変化にはつながりません。

見ておきたいのは、データ更新の流れ、評価結果の戻し方、誰がどの場面で使うのかまで設計できるかどうかです。PoCの成功だけで終わらせず、継続して回せる形まで考えられるかで、実際の効果は変わってきます。

現場に定着しない

分析結果が出ても、現場がその結果を使いこなせなければ、効果は見えにくくなります。入力が重い、判断理由が見えにくい、既存フローに組み込みにくい。こうした状態では、結局これまでの進め方に戻ってしまいがちです。

定着を左右するのは、精度だけではありません。現場の判断とどうつなげるか、どの会議や実験計画で参照するのか、誰が使うのかまで含めて設計する必要があります。導入効果を考えるときは、この運用面を外せません。

効果をどう判断するか

開発期間で判断する

もっとも見やすい指標の一つは開発期間です。ただし、最終的な上市時期だけを見るのではなく、候補抽出までの期間、試作着手までの時間、評価のやり直し回数がどう変わったかを見るほうが、実際の効果はつかみやすくなります。

全体期間の短縮だけを追うと、ほかの要因も混ざります。どの工程が軽くなったのかを切り分けて見ると、マテリアルズインフォマティクス(MI)が効いている場面を判断しやすくなります。

試作・実験回数で判断する

試作回数や実験回数も、効果を見やすい指標です。外れ候補に使う回数が減ったかどうかを見ていくと、現場でも共有しやすくなります。従来なら何回試していたか、導入後は何回で有望候補にたどり着けたかを比べると、変化を整理しやすくなります。

ここで見たいのは、単純な回数の多い少ないではありません。有望な候補に集中できるようになっていれば、回数が少ししか変わらなくても十分に意味があります。

候補絞り込みの精度で判断する

候補絞り込みの精度とは、試す価値の高いものを上位に置けているかを見る考え方です。材料開発では、予測値の小さな誤差よりも、次に見るべき候補を外しにくいことのほうが重要な場面があります。

この視点で見ると、マテリアルズインフォマティクス(MI)の評価は現場に近づきます。上位候補の中から手応えのある条件にたどり着けているか。従来より早い段階で有望領域に寄れているか。そこまで見ると、導入効果を判断しやすくなります。

若手でも回せるかで判断する

効果を測るときに見落としやすいのが、特定の担当者しか使えない状態になっていないかという点です。ベテラン一人が回せる仕組みより、若手や別担当者でも一定の精度で使える仕組みのほうが、組織としての価値は大きくなります。

手順書、入力条件、結果の読み解き方、実験計画への落とし込みまで含めて、複数人で回せるかどうかを見ておく必要があります。継続運用を前提にするなら、この視点は欠かせません。

成功事例で見るマテリアルズインフォマティクス(MI)の効果

探索サイクル短縮・市場投入加速型

探索の初動を早める事例として見やすいのが、ENEOSの取り組みです。ENEOSでは、実験、シミュレーション、AIを組み合わせながら新素材開発を進めています。メタノール合成向け新規触媒の探索では、従来のシミュレーションなら数年かかる計算を数週間まで短縮し、高性能な触媒探索を進めています。こうした事例からは、候補探索の初期段階を前倒ししやすいことが読み取れます。

このタイプの効果は、最終成果だけでなく、開発の出発点をどれだけ早く整えられるかにあります。自社でも探索段階に時間を使いすぎているなら、まず参考にしたい事例です。

若手育成・属人化解消型

若手育成と属人化解消の軸で見やすいのが、巴川コーポレーションの事例です。日立ハイテクの伴走支援のもとで、経験の浅い開発者でも、2〜3カ月でマテリアルズインフォマティクス(MI)を使った分析に取り組み、ベテランに近い考察ができる状態を目指しています。若手が判断の入口をつかみやすくなる点で、参考にしやすい事例です。

この事例のポイントは、ツール導入だけで終わっていないことです。材料開発の知見を持つデータサイエンティストによる支援と、現場で使える形への落とし込みを組み合わせています。人材育成まで含めて効果を見たい場合に相性のよい進め方です。

試作回数・試験回数削減型

試行錯誤の負担を減らす観点では、Hondaの取り組みが参考になります。Hondaの技術報告では、マテリアルズインフォマティクス(MI)活用を進めるために、材料データと関連情報を統一形式で格納・管理できる包括的な材料データベースを構築しています。約1万件の試験データと標準物性を格納し、データクレンジング工数の低減や、設計・CAEで必要なデータ取得のしやすさ向上、業務効率向上と開発費削減につなげています。

ここで見ておきたいのは、予測だけでなく、材料データを使いやすくする基盤づくりです。試作や試験の回数を減らしたい場合でも、前提としてデータを探しやすく、使いやすく整えることが欠かせません。

継続運用体制の実現型

継続して回せる体制づくりという点では、古河電気工業の取り組みが参考になります。古河電気工業では、データの蓄積と分析を全社で一元管理するデータ統合基盤を整え、需要の多い重要ソリューションを「型」として展開しています。材料分野では、特性予測AIモデルの作成や、要求仕様を満たす材料レシピの出力により、迅速な開発・製品化と効率20〜50%向上を進めています。

この事例が示しているのは、単発の検証で終わらせず、全社で継続運用できる仕組みに寄せていることです。テーマが変わっても回しやすい体制を整えたい場合に、見ておきたい考え方です。

効果を出すために確認したい相談先の選び方

相談先を選ぶときは、自社の材料テーマや評価指標に近い領域の支援経験があるかを見ておきたいところです。材料によって、必要なデータの粒度も、重視すべき性能も、試作の進め方も異なります。領域理解が浅いと、分析結果は出ても現場で使いにくい形になりやすくなります。

次に見たいのは、PoCだけで終わらず、その後の運用まで支援できるかどうかです。データ整理、評価条件の統一、実験計画への戻し方、現場教育まで含めて考えられる相談先なら、成果が一部の担当者に閉じにくくなります。逆に、短期検証だけで終わる設計だと、定着しにくくなります。

また、予測精度の高さだけを強調していないかも確認しておきたい点です。材料開発では、なぜその候補を優先するのか、どの条件で活用できるのかを現場が説明できることが重要です。判断理由まで含めて使いやすい支援かどうかを見ると、導入後のズレを減らしやすくなります。

ここまで読んで、自社で重視したい効果が整理できたら、次は成功事例一覧で近いテーマを確認する段階です。そのうえで相談先を比較したい場合は、マテリアルズインフォマティクス(MI)ベンダー一覧から、自社テーマに近い専門性を持つ候補を見ていくと判断しやすくなります。成功事例で効果の出方を確かめてから比較に進む流れのほうが、相談先選びの軸がぶれにくくなります。

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