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三菱重工業のマテリアルズインフォマティクス(MI)活用による成功事例

目次

構造用金属材料の強度や寿命は、化学組成・熱処理条件など多くの因子が絡み合い、従来は破壊試験で確認するのが一般的でした。ただし試験を増やすほどコストと時間がかさみ、網羅的な評価が難しいのが実情です。三菱重工業は、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)を構造用金属材料に適用し、材料強度特性を迅速に予測する技術を確立しました。歩留まり改善やばらつき低減、寿命評価の高度化につながる成功事例としてポイントを整理します。

1分でわかる要約

POINT 1

三菱重工業は、MIを構造用金属材料へ適用し、過去データに基づいて材料強度特性を迅速に予測する技術を確立しました。破壊試験の負荷を抑えつつ、材料強度のばらつき低減や製造歩留まり改善、寿命評価技術の高度化に寄与できる見込みを得ています。

POINT 2

蒸気タービン長翼(17-4PH鋼)では、素材の化学組成・熱処理条件などと引張試験の0.2%耐力のデータ約8300点を用い、XGBoostで予測モデルを構築。化学組成を考慮して最適な時効熱処理温度を予測し、管理値を満たす確率を高められる見込みを得ました。

POINT 3

高温蒸気配管に用いられるフェライト系耐熱鋼(9Cr-1.8W鋼など)では、社内データとNIMS Creep Data Sheet等のデータを標準化して学習し、CatBoostでクリープ寿命を予測。さらに感度解析により、ばらつき低減に向けて材料仕様(購入仕様)へ反映する検討にもつなげています。

専門的な領域を持つMIベンダーを選ぶ重要性

強度・寿命のような構造材料のMIでは、化学組成・熱処理・試験条件などデータ粒度が細かく、外れ値やチャージ差(ロット差)まで含めた設計が必要です。モデル構築だけでなく、工程条件の最適化や検査判断へ落とし込む運用まで伴走できるパートナー選定が成果を左右します。

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三菱重工業が抱えていた課題

高温機器に使われる構造用金属材料では、強度特性が化学組成や熱処理条件などの多因子に左右されます。従来は破壊試験で定量評価してきましたが、試験数が増えるほどコストと時間が大きくなり、網羅的なデータ取得と評価が難しい点が課題でした(PDF p.1)。

例えば蒸気タービン長翼の製造では、17-4PH鋼を鍛造し、溶体化・安定化・時効などの熱処理後に余剰部から試験片を採取して引張特性を確認します。しかし0.2%耐力がばらつき、管理値を満たさないケースがあり、再熱処理や翼の廃棄に至ることもあるとされています(PDF p.1)。ばらつきの一因として素材化学組成のばらつきが想定され、MIで化学組成を考慮した最適時効温度を予測する方針が示されました。

MI導入で出した成果

蒸気タービン長翼の事例では、素材化学組成(C, Si, Mn, P, S, Ni, Cr, Cu, Al, Nb+Ta, N, Ti)や熱処理条件、0.2%耐力のデータ約8300点を標準化して学習に使用し、未知の材料チャージに対する過大評価を避けるため、同一チャージが学習・テストに混在しないよう配慮してテストデータ(約800点)を抽出しています(PDF p.2)。アルゴリズムは複数比較のうえXGBoostを採用し、テストデータでの予測精度は±3SE=±37.2MPaで、管理幅より小さいことを確認しました(PDF p.3)。

さらに、決定木系モデルの影響で「時効熱処理温度-0.2%耐力」の関係が階段状に出る点に対し、代表温度での予測結果を2次多項式で近似する工夫を実施。これにより関係を連続的に扱えるようにしつつ、予測精度は±3SE=±37.8MPaとほぼ同等を維持しています(PDF p.3)。結果として、素材の化学組成に応じた最適時効温度を予測して実製品に適用することで、従来よりも高確率で0.2%耐力が管理値を満たす見込みを得た点が成果です(PDF p.3~4)。

高温蒸気配管の事例では、フェライト系耐熱鋼の母材・溶接継手のクリープ破断データとNIMS Creep Data Sheet等のデータ約1680点を標準化して学習し、CatBoostでクリープ破断時間(常用対数)を予測。こちらも材料チャージを考慮してテストデータを抽出し、未知チャージでの精度検証を行っています(PDF p.5)。同社では従来のLMP法と組み合わせ、検査箇所のスクリーニング等に活用しているとされています(PDF p.5)。

今後の展望

本技術が示す展望は、MIを「予測」で終わらせず、製造・保守の意思決定へ組み込むことです。長翼では最適時効温度の予測により、ばらつき低減と歩留まり改善(再熱処理・廃棄の低減)に寄与する可能性が示されています(PDF p.6)。配管では、チャージ差を考慮した寿命評価により、効率的な保守管理や信頼性向上につながる考え方が提示されています(PDF p.4~6)。

さらに、部分依存プロットによる感度解析で、クリープ破断時間に影響する化学組成(例:N、W、N/Alなど)を定量的に捉え、購入仕様へ反映してばらつき低減や低強度材の購入防止を検討している点も重要です(PDF p.5~6)。MI導入を検討する企業は、目的(歩留まり、ばらつき、寿命評価、検査最適化)を定めた上で、データ設計と「運用で使う出口(工程条件・仕様・検査判断)」をセットで作ると、現場実装まで進めやすくなります。

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