近年、化学・素材分野では、膨大な実験条件や原料の組み合わせを効率よく絞り込む手法として、マテリアルズインフォマティクス(MI)の活用が広がっています。中でもデンカの事例は、データ解析の精度だけを追うのではなく、開発現場と連携しながら次の実験や判断につなげる運用を重視している点が特徴です。
デンカ株式会社のデンカイノベーションセンターでは、データサイエンスを活用して素材の開発・高度化を行うマテリアルズインフォマティクス(MI)を進めています。現場の研究者と解析担当が二人三脚で研究のスピードや精度を高めていく姿勢は、マテリアルズインフォマティクス(MI)を実務で活かすうえで参考になる事例です。
デンカのイノベーションセンターでは、新素材の開発や既存製品の高性能化を進めるうえで、原料の組み合わせや調合法など無数の条件を検討する必要がありました。こうした素材開発では、実験を重ねながら最適な条件を探る工程に時間がかかり、工数や開発コストが大きくなりやすいという課題があります。
また、開発現場で得られるデータは、教科書的なきれいなデータばかりではありません。実験手技や条件の違いによる誤差やばらつきも含まれるため、理論上は整っていても、現場で使いにくい解析結果では研究開発の前進につながりにくい状況がありました。そのため、統計的な整合性だけでなく、現場で次の判断に使える解析へ落とし込むことが求められていました。
デンカの解析技術研究部では、材料科学分野におけるデータサイエンスとしてマテリアルズインフォマティクス(MI)を担当し、素材開発の工数や開発コストの低減を目指しています。イノベーションセンターの研究員だけでなく、他の事業所や工場にある研究部署のメンバーとも密に連携し、開発テーマごとに必要な解析を進めている点が特徴です。
取り組みの進め方としては、現場から提示された実験データを解析し、その結果を現場へ返し、結果に基づいて実験条件を見直して再度データを取得し、さらに解析するというサイクルを回しています。解析担当だけで完結するのではなく、研究開発の担当者と一緒に解析結果の意味を確認しながら、次に何を試すべきかを考える運用を重視しています。
また、データ解析だけでなく、研究開発に役立つツールづくりにも取り組んでいます。例えば、顕微鏡画像から手動で大きさを測る作業を自動化するプログラムを整備するなど、現場の負荷を直接下げる支援も進めています。
こうした取り組みを通じて、現場と連携しながら解析と実験条件の見直しを繰り返す運用が進んでいます。実際に、素材開発の現場では、このサイクルを回すことで開発期間が体感で1〜2カ月短くなったと清水氏は語っています。
また、顕微鏡画像の計測を自動化するプログラムを導入したことで、手作業での測定に比べて操作やデータ処理の負担が軽減されました。現場からは「操作やデータ処理が楽になった」という反応があり、解析結果が実務の効率化につながっています。
さらに、現場との連携を続ける中で、「性能がよくなった」「新たな知見が次の素材開発の基礎になった」といった手応えも得られています。大きな数値成果だけではなく、次の開発テーマに活かせる知見が蓄積されている点も、デンカのMI活用の成果として注目できます。
参照元:IPA公式HP(https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-transformation/careerints/interview-11.html)
デンカでは、個別テーマの解析にとどまらず、データサイエンティストの育成にも力を入れています。2021年からはイノベーションセンターや工場の研究員全員を対象とした育成を始め、eラーニングを通じてマテリアルズインフォマティクス(MI)、機械学習、統計解析の基礎を学べる体制を整えています。eラーニング受講者は延べ600名近くにのぼり、その中から各部署より推薦された数十名を対象にプログラミング教育も実施しています。
また、生成AIの活用も進んでおり、メンバー全員が日々の業務で利用しています。将来的には、研究者が特別に「データサイエンスをやろう」と気構えなくても、ExcelやWordを使うような感覚で自然に研究開発へ取り込める状態を目指しています。デンカの事例は、マテリアルズインフォマティクス(MI)を一部の専門部署だけのものにせず、現場へ広げていく取り組みとしても参考になります。
MIベンダーの中には、専門領域を持つ企業があります。各ベンダーが保有するデータの質と量は解析精度に大きく影響し、研究開発のスピード向上やコスト削減につながります。そのため専門領域で強みを持つベンダーのMIを選ぶことが重要です。
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